表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/49

23.新たなる力


草原の中を一匹の狼が走る。

向かう先にいるのは、淡い赤色をした不定形の魔物、ウーズ。

狼がその牙を突き立てんと大きく口を開けて飛び掛かったその瞬間、前後左右からの打撃で撃墜されてしまった。


衝撃に目を回し、倒れ込む狼。

ウーズであるグランドは体を変化させ、触手のように細長く伸ばして狼を攻撃したのだった。


下から突き上げるアッパーと、上から打ち下ろすチョッピング。そして左右からのフックによる同時攻撃。

人間ではあり得ないその攻撃は、『体積変化』を持つウーズならではだった。


「げぼっ」


狼は失神しているようだが、まだ死んではいなかった。ここはダンジョン内の『狩場』であるので、殺さなければ『食料』にならないし、経験値とソウルを稼げない。

グランドは体液を噴出し、狼にぶっかける。

別にウーズに口のようなものがあり、そこから出している訳ではないのだが、グランドはこの『溶解液』を放つ時、毎回そのような擬音を口にしていた。


肉と毛が焼ける匂いをさせながら、狼の体が溶けていく。


打撃で昏倒させてからの『溶解液』これはウーズになってからのグランドの必勝パターンだった。

なにせスライムもウーズも『筋力』のステータスが非常に低い。

グラップラーによる打撃でもろくなダメージが与えられなかった。


だが打撃は『脳震盪』『気絶』という相手を一時的に行動不能にするバッドステータスを付与しやすいという特徴があった。

スライムの特性を活かして、相手の意識の外から攻撃。『連撃』で手数を増やして相手の行動不能を狙う。

止めは他のメンバーに任せる事になるが、基本はパーティ戦なので特に問題は無かった。


高い『頑強』と『物理耐性』のお陰で非常に粘り強く、他の戦闘が片付くまで敵を抑えるのがグランドの役割だった。


職業LVが上がった事で獲得した『テンプルシュート』で行動不能にさせる確率が上昇。

更に、ウーズの種族スキルで『溶解液』を獲得した事で、攻撃力も増した。


スライムもウーズも『魔力』のステータスが高い。魔法も使えないのになんでだろうと思っていたのだが、『溶解液』は『魔力』依存のスキルだった。


「さて、と……」


経験値とソウルが入った事で、狼の死亡を確認したグランドは、次の獲物を探すべく移動を開始する。

通常、この不定形族の動きは非常に遅いのだが、『体積変化』と『分裂』によってグランドは独自に高速移動を行っていた。


『分裂』で自らの体を分け、本体を遠くへ投げる。

これを分裂した場所と、投げられた先で繰り返す。

体はどんどん小さくなるし、本来なら分裂するごとにステータスが低下するのだが、『欠損無効』でこれを補っていた。


戦闘になったら、少し粘れば自分の分身が次々に投げ込まれてくるのですぐに大きくなれる。

全部が合流するのは時間がかかるが、分裂している間はSPを消費する、SPが無くなると分身が消滅する、という本来ならデメリットになる効果を利用して強引に合流する事が可能だった。


「お」


ふと空を見上げると、オオワシが舞っていた。

マッハイーグルのケビンだ。何かを探すように旋回しているのではなく、何かに目がけて一直線に滑空している。

その先に獲物がいるのだろうな、と思ったら、突如、視界からケビンが消えた。

直後に遥か前方の茂みが揺れ、転がるように鹿が出て来る。


遠目でも瀕死だとわかる。『マッハタックル』による超音速攻撃だった。

茂みから鹿を追って飛び出したケビンは、嘴で鹿の首を挟むと、その場で回転。鹿の足が地面から離れ、背中から叩きつけられた。

強引な投げ技である。間違いなく、投げ飛ばされる前に、首の骨が折れているだろう。


光となって消えて行く鹿をしり目に、ケビンは再び大空へと飛び立っていった。


「いたぞ!」


一方、森の中にはダークマージのシュガーと、デビルプリーストの惣栄が居た。

最初は視界の悪い森の中で戦う事はしていなかったが、遮蔽物が多く、敵の機動力を封じられるため、彼らは森の中で戦うようになっていった。


二人の目線の先にいるのは一頭の猪だ。

中ボスの迷宮猪ではない、通常の猪である。


「では、拙僧が投石で気を引いている間に」


「ああ、魔法を俺がぶちこんでやるよ」


そして二手にわかれ、二人は移動を開始する。

惣栄は元僧侶のようだが、殺生に関してどう思っているんだろう? とシュガーや他のメンバーは常々思っていたが、本人が気にしていないなら気にしてもしょうがない、という結論が出ていた。

ポラリスは、できるだけこの世界に来た目的を達成させてやりたいと言っているが、へたに藪をつついて、戦闘に参加してくれなくなったら、それはそれで困る。

せめて回復魔法を覚えてから、というのが暗黙の了解になっていた。


惣栄は自分と猪の間に大きな木があるように位置取りし、その木の陰から顔を出した。

拾った石を、まずは猪の近くに投げる。


餌を食べていたらしい猪は、それに驚き、顔を上げた。

相手も緊張しているのがわかる。臨戦態勢に入った事を、これまでの経験から惣栄は直感した。


もう一度投石。今度は体に当てるように。

特別なスキルも無いし、『器用』のステータスも並程度だが、既に何度も繰り返しいるだけあって、石は見事に猪に命中する。

勿論、大したダメージになる訳が無い。


明らかに怒りを滲ませ、猪は後ろ足で地面を掻いている。

惣栄に向かって突進して来るつもりだと、誰の目にもわかった。


そこへ、後方から飛来した炎の弾丸が着弾し、爆発。猪の体を吹き飛ばした。


「まだだ!」


地面に猪が落ちると同時に惣栄が叫んだ。

直後に飛来する炎の弾丸。再び爆発が起こり、猪の体を吹き飛ばすと、その体が空中で光へと消えていく。


「よしよし、随分戦えるようになったぜ。惣栄とのコンビはいけるな」


「四人のメンバー固定でコーテーションしてくれれば連携が取り易くなるんだがな」


「こればっかりはしょうがねぇさ。色んな奴と組んで色んな連携パターン考えておかないと、実戦でどうなるかわからねぇんだし」


「まぁ、そうだな」


「そろそろ30分が経つ。中ボスが出て来る前に二人と合流しようぜ」


「ああ」


グランドとケビンは森の外で戦っているというのは、事前に決めてあった。

森の中に入るとケビンの強みが活かせないし、グランドは見つけられなくなってしまうからだ。




水中を一匹のソードフィッシュが駆け抜けて行く。

シャープで細長いシルエットに、長く扁平に伸びた吻が相まって、名前の通り、一振りの刀を思わせる。

ダークはそのまま、突撃し、獲物に吻を突き刺す。頭を振って切り裂くと、次の獲物へと向かった。

切裂かれたのはダークと同じ種族のソードフィッシュ。まだ息があるようだが、ダークに遅れてやってきた、彼の配下に設定してあるキラーフィッシュが群がり、これを食い殺した。


「どうなるかと思いましたが、案外いけますな」


一見すると毛深い人間のようにしか見えない、セルキーのこんにゃくが、手にした槍でソードフィッシュを突き殺すと、ダークに近付きそう声をかけた。


「『漁場』に入って、ソードフィッシュの群れを見つけた時は肝が冷えましたけどね」


現在でも『漁場』を使用するのはこんにゃくとダークだけ。

二人共が進化したため、『漁場』を強化する事にしたのだ。


一部施設はソウルを支払う事で効果を上昇させる事ができる。

『漁場』や『狩場』の場合は、獲得できる『食料』が多くなる代わりに敵が強くなるのだった。

当然その分、獲得できる経験値やソウルも増えるが、倒せる数が減り、結果的に稼ぎにくくなる可能性はあった。

一度強化してしまうと元に戻せないというリスクもある。


最悪死亡してしまう事もあって、ポラリスは大分渋っていたのだが、結局二人に押し切られて最終的には『漁場』の強化を承諾してくれた。

ソウルを大量に稼がなければならないという事情も後押しする事となった。


そして『漁場』に入った二人が目にしたのは、キラーフィッシュの代わりに回遊する、ソードフィッシュの群れだった。


尻込みするこんにゃくを余所に、キラーフィッシュを引き連れてダークが突撃。これが功を奏したのか、ソードフィッシュの群れは混乱したらしく、反撃らしい反撃を受ける事無く、ダークによる一撃離脱戦法で順調に数を減らしていた。


「そろそろ30分ですな」


「さて、中ボスは何でしょうか? キラーシャークが可能性高いですかね?」


言いながらもソードフィッシュを狩りつつ、周囲を警戒していると、突然下からやって来た何者かに、キラーフィッシュが数匹一度に食われてしまった。


「な……!?」


あまりの光景に驚くダーク。

上昇したそれ(・・)は、今度は高速で下降。残ったキラーフィッシュを狙っている。


「させるか!」


こんにゃくは『海豹化』を使用して水中での高速移動を可能にすると、それ(・・)に目がけて突進する。

キラーフィッシュは一部損耗して入れ替えられているが、基本的には二人と共に最初から『狩場』で戦い続けたベテラン揃いだ。

経験値の上昇が転生者に比べると抑えめなようで、いまだにキラーフィッシュのままだが、その多くは、既に進化が可能になっている。


それをむざむざ殺らせる訳にはいかない。


海豹の状態で体当たり。すぐに『海豹化』を解いて、槍を突き立てる。


「わぁお」


そこで改めて、こんにゃくは相手を見た。


ソードフィッシュを始めとした、魚類特徴の細長い、流線形ではなく、横に広がる扁平な体。

口が大きく、キラーシャークでさえ一飲みにできそうな迫力がある。


全長は5メートルほど。横幅は10メートルはある。


「ナマズ……?」


こんにゃくの印象通り、その魔物はクリーンナップと呼ばれる、巨大な鯰だった。

体を振ってこんにゃくを引きはがす。

巨体に似合わない機敏な動きで方向転換。大きな口を開けてこんにゃくを飲み込もうと迫る。


「う……!?」


クリーンナップが迫るのと同時に、体が引き寄せられるのを感じた。

周囲の水毎、相手が呑み込もうとしているのだ。


「くそ!」


『海豹化』でその場からの離脱を図る。

しかし、相手の吸い込む力が強く、お互いの距離は徐々に縮まっていく。


「こんにゃくさん!」


そこへ、ダークが突進した。

十倍以上の体格比がある相手だが、クリーンナップはダークの体当たりを受けて大きく揺らぐ。

攻撃の初手の威力を増幅させる『一撃必殺』、体当たりの威力を上げる『突進強化』、移動しながらの攻撃の威力を上げる『強襲』、武器戦闘以外の時ステータスを上昇させる『格闘』、素手による攻撃の威力を上げる『徒手空拳』により、攻撃力が大幅に上昇した結果だった。

こんにゃくが先に攻撃しているため、残念ながら『先手必勝』は発動ししなかった。


「いける!」


ダークの渾身の一撃で、明らかにクリーンナップが怯んでいる。

こんにゃくも海豹から姿を戻し、槍で攻撃する。

防御力はそれほど高くないようなので、一撃の威力を上げる『パワースパイク』ではなく、手数を増やす『二連突き』を選択し、ひたすらに突きを繰り出す。


左右からダークとこんにゃくが攻撃し、注意を引いている間に、生き残ったキラーフィッシュが背後に回り込み、これに噛みついた。


こうなると最早勝敗は決した。


巨体に見合った生命力を発揮したクリーンナップだったが、数十分後には、光となって消えた。


「ふぅ……」


心地良い達成感を感じながら、ダークが一息吐く。


「ダークさん、悪い知らせです。もうすぐ30分経ちます……」


「…………」


水底から、何かが物凄い勢いで上昇して来るのを感じ、ダークは気を引き締め直した。


暫くこんな感じで、エピソードにからめつつ、進化したメンバーの紹介をしていく感じになると思います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ