魔王と友達って、誰に言えるだろうか。暗殺されちゃうよ
勇者と魔王は向かい合っていた。
勇者は何度も魔王軍と戦い、困難に打ち勝ってついにここまで来たと、誰もが思っている筈だ。
本当は魔王軍に手加減してもらいここまで、魔王の玉座までたどり着いた。
ここまでは計画通り。魔王との闘いは互いに殺さない約束だが、魔王の力って俺の数倍はあるから下手すると死んでしまう。
命を賭けた茶番なんてやりたくない、というか魔王と闘いたくない。
でも、もう引き返せないんだあぁぁ!チクショォォォー。
「魔王!私はここまで〔手加減してもらい〕ついに来たぞ!」
「勇者、我が配下は強かったであろう。そんな状態で我のところに来るとは〔結構な怪我してるけど大丈夫なのか〕、我を甘く見ているようだな〔攻撃が直撃すると死んでしまうぞ〕。」
「魔王、俺は後には退けないんだ〔後ろで皆が見張ってるから〕。皆の願いを俺は背負っているからな〔まあ、そんなの嘘で今逃げると教会に殺されるから〕ここで逃げるわけにはいかない!〔にげた勇者って殺されるのだろ。魔王さん。〕」
「フッ、勇者よ。お喋りはここまでにして〔そろそろ始めないと気が抜けそうだから〕、始めるとしよう。」
「ああ、そうだな魔王。〔計画どうりにだよね〕」
「勇者よ、かかってこい!〔スイッチ入ったらごめんねw〕」
え?魔王さん?
俺と魔王さんが戦う時のシナリオはこうだった。
初めは軽い攻撃の連打。次は徐々に魔王が力を強くする。それで俺は圧されていき、苦戦しはじめながらどうにか戦うため限界を超えているようにみせる。最後は限界を超え続けたようにみえる俺は魔王を超えた様にみせて魔王にギリギリ致命傷にならない傷を与える。
だたのだ。なのに。魔王の野郎は開始そうそう、
「クリエイト・ダークネスレインスピア」
この魔法は有名だ、あの野郎は世界との初戦この魔法を使い世界平和連合という世界中が結集した軍を全滅させた。黒き槍は雨のように絶え間なく降る。最もこの魔法はそれだけではないのだ。槍を壊そうとしても人類最強でも20回攻撃して破壊。しかも槍は破壊すると爆発、人を刺した槍は大爆発し、周りの槍も爆発し連鎖爆発。間隔が嫌らしいくらい計算されている。あと一定時間経つと爆発する、あの野郎はそんなものを使いやがった。まあ、人が俺だけだがら大爆発はないのと、魔王の玉座が広くて助かったが狭い場所だと野郎だけ助かるけど俺は死ぬ自信がある。
ま、今も死ぬ自信があるな。
クソヤロォォオォォ!と心の中で叫びながら決死の覚悟で抗った。
まずあれが地面に刺さった時点で俺の敗けだ。移動場所の減少と移動が阻害される。良い状況じゃないと殺られるのは確実。それほどまで実力の差がある。しかも魔王はヤる気満々だ。どうしよ、俺は死にたくない!
考えろ俺、今までだってどうにかやってたんだ。俺は勇者なのに初戦の相手は雑兵レベルが聖剣並みの武具を装備していて俺は一人、相手は千体をどうにか乗り越えたんだ。思い出すと人間どもに腹が立ってきた。
俺の能力は、重力操作 (自分と百メートル以内の物 限定)、体内衝撃操作、再生、瞬間(瞬間を感じとる、使用すると疲れる、多用すると時間の感覚が狂う)、持続。一か八かで重力操作で野郎にぶつけるしかない。
「お返しだ」
魔法を魔王に向けて全て返した。嫌がらせに俺の方向と魔王の方向に重力を向けて俺の方向の重力を一瞬で消すとソニックウェーブを起こしている。槍同士が刺さり爆発しそうだな~と思っていると光ったと思ったら壁に叩きつけられた。何が起こった?あっ、熱!爆発したのかな?煙が凄い。お、煙が晴れた。そこに映ったのは多重魔法障壁で守られていた魔王だった。だが障壁は殆ど破壊され、一枚だけ残っている。殺す気しかないだろコレ、重力操作がなかったら死んでたな~。
「フッフフハァッハハハー!。いいぞ、いいぞ勇者!もっと我を楽しませろ!。」
「ああ、言われなくともやってやるよ。」
駆け出したが策なんてない。あるのは今までの事をぶつけるだけだな。剣での戦闘。ただそれだけ。目の前には神剣を持った魔王、対して俺は親友が鍛えた折れないただの剣。全てが俺の遥か上。だが俺は斬るしかできないのだから。
満身創痍というのかな。何度切り合ったのか、何分?何時間?もうよく分からない。防具は所々欠損している、けど剣は折れていない!
「息が上がっているぞ。」
「ハァ、ハァ、ハァ.....ハ、まだだ、まだ!」
「そうか、まだ我は満足してないのだ。頑張ってくれよ。」
クッソ、攻撃がとおらない。重力操作と瞬間を使っても無理なのか?なら、今より長く、止まったように時を感じるんだ!
あれ魔王の動きが遅い。剣の軌道がわかる。自分の初動が遅くても間に合う。
「ほう、付いてこれるのか」
まだ追い付けないのか!もっと速く!速く!!速く!!!
「うおおおおぉぉぉぉおおお!!!!!」
剣と剣がぶつかり合い、激しい衝撃が起きていた。自分が何をしているのかなからなくなってきたとき。
グサッ。
理解出来なかった、殺すつもりなんてなかった。なのに、俺の剣は魔王の剣を破壊し、心臓を貫いていた。
人間の国に帰った。帰るとパレードがあり国中からの祝福を受けた。笑顔が出ると思っていたが死に顔らしく馬車の中で顔が見えないように手だけ振った。
後は国王に褒美は何がいいか聞かれ、魔族の領地全土を無理やり貰った。
どんな顔で魔族に会うのだろうか。
王国から魔族の領地までを半年かかるのが一年かかった。
魔族の領地は戦争が起きたのがわからないほど大地は緑に溢れ、立派な町があった。ドンッ。誰かとぶつかってしまった。
「大丈夫ですか?」
と言ってよく見ると小柄の泣きそうな女性と大きな籠、転がった沢山の果物。俺は自分でも驚くほどすごい勢いで拾っていった。
最後の一個を拾うと女性は涙目で感謝を言って何処かに消えた。
少し経って気づいた。謝り損ねたなー。
ゆっくり歩くとこの町がわかってきた。人間が統治しているようだ。魔族の領土なのに。俺は今、何をしている事になっているのか。なんだろう、裏切られた気分みたいだ。