phase5「散開」
前回のあらすじ
男女16名を巻き込んだ謎の組織、実験室による実験。
始まった合図と共に暗転しそれぞれが起き上がった場所は謎の「H」型の建物、
起き上がった9名は集合し状況の整理を行う。
そんな中モニターを映し当てられた文字は追加ルールという新しい文章だった。
映された文字にそれぞれがそれぞれの驚愕を浮かべている中
そこに3人の人物がやってきた。1人はゴスロリの服を着た黒い長髪の女、
また1人はどこかの学校の制服を着た少年のような顔立ちの男、
そして最後の1人はいかにも悪そうと思わせる目つきと態度の男だった。
女は特に驚く様子もなくその場へと向かい、
制服の男と目つきの悪い男の2人は他にも人がいたことに驚いている。
それにいち早く気が付いたのは霞沢だった。
「……!君たちは……」
その声にテレビへと向けていた目線が一気にその来た
3名らに集まると1人の目つきの悪い男が声を上げる。
「何見てんだよ?てかここはどこだよ……
つーかお前らここに集まって何してんだよ?あァ?」
「まぁまぁ、落ち着きなよ黒澤くん!
すみません……彼に悪気はないんですよ」
「あン?黒山やんのかコラ?」
黒澤と呼ばれる目つきの悪い男は変わらず不機嫌そうに
視線を向ける者たちを威嚇しそれを黒山と呼ばれる制服の男は宥めた。
するとゴスロリの長髪の女は1歩ずつ踏み出してモニターに映された文字を指さす。
”姫川潤”
そうするとそのまま円卓のところに座る。
それに榊原が動き姫川という名前に指さした女の前に行き
手を使って何かをしたのちすぐに振り向き岸谷に向かい呟いた。
「岸谷くん、かれ……いや彼女の名前は姫川潤で合っているよ」
「なぜわかるんだ?」
「彼女は喋ることができないらしい。
代わりに手話でなら会話が可能だったからやったまでだ。
耳の方と言葉の意味は理解できるようだが、
まぁ一応僕は彼女の横に行くとしよう。
手話で会話できる人が横にいれば良いだろう
……彼女にとっても僕たちにとってもね。」
と榊原は岸谷から姫川の方へと移動すると
手話でまた何かを話しているようだった。
なお岸谷と姫川は席がちょうど正反対のため奥の方になっている。
すると無視するなや!?と急になまった黒澤と呼ばれる男に対して
黒山と呼ばれる男は宥めつつ自己紹介をみんなの前で始めた。
「えーっと名前がないと多分不都合だと思うので……
僕の名前は黒山勇と言います。
この制服は高校の制服なんで歳分かっちゃうかと思いますがよろしくお願いします。」
「わざわざ自己紹介ありがとう。
今状況整理とその確認を行うに至って進行役を買って出た岸谷龍牙だ。
えとその横の君は……」
「君呼ばわりはやめろ、なんかイラっと来る。
俺の名前は黒澤亮平、
口の悪さについて自覚はあるがやめる気はない。
で、話は変わるが進行役さん今は何をしてたんだ?
テレビのモニターなんか見やがって……」
と黒澤は改めてその場を確認しまた今来たばかりの他の2名も同様に確認をした。
そして岸谷はふぅと溜め息を漏らすと動じることもなく
そのまま3名に状況の整理と確認を行う。
すると黒山はぽんと右手拳を左手のひらに当てて呟いた。
「だからさっきテレビをつけたら僕の名前が入っていたわけだ。」
「なんで分かったんだ……?」
その霞沢の問いに黒山はにこりと笑って話す。
「いや僕サスペンス系の映画を見るのが好きでね。
昔見た映画の始まり方そっくりだったからもしかしてとは思ったんだ。
そのときは部屋にいて色々と確認をしていたし……
そのあとにテレビに触れたら名前が載っているからびっくりしたよ。
―――まぁ僕の名前は載っていなかったんだけどね?」
映画を見て今の状況を確認できたのが素直にすごいと思った
霞沢だがその最後の呟きに疑問を感じた。
(どうして名前を確認できたんだろう……テレビに名前が載っていた……?)
「なぁ疑問なんだがテレビに載っていた名前の欄には
自分の名前が無かったって言いたいのか?」
「うん、そうだよ。そのときは確か……榊原、岸谷って書いてあったかな」
その問いに霞沢ではなく榊原が呟く。
「―――うん?ということはあの名前欄はどういった順番で載るんだ?
あの名前の順で気づいたのであれば僕、岸谷、霞沢の順で載るはずだと予想するが……
もしかして僕、坂城、岸谷、本田、霞沢、彩都、駒川、姫川、黒山の順で載るのか?」
それに霞沢はそうか、と納得する。
依然としてつけられたモニターには
榊原茂 岸谷龍牙 霞沢芳樹 駒川武臣 黒山勇
坂城麗華 本田琴 彩都早紀 姫川潤 黒澤亮平
と書かれ名前が載っていた。
唯一名前の載っていない黒澤は首を傾げて呟く。
「お前ら何に納得行ってるかが分かんねぇんだけど詰まる所なんだ?
名前の載る順番が右からじゃなくて下からってことか?」
「馬鹿っぽい見た目の癖に頭は良いんだな。
そうだろう、多分その順番で合っているはずだ。
しかしこの質問を投げかけた霞沢、よくそんなところに目が行ったな」
榊原はそう呟きふむふむと鼻息を漏らした。
馬鹿呼ばわりされたことで怒り殴りかかろうとする黒澤を黒山が抑えつつ
霞沢はそのまま疑問を口にした。
「映画を参考に納得できたのは正直怪しいけど納得できたのなら良い。
じゃあなんで気付けた黒山は一番最後に名前が載ったんだろうか?
榊原、お前の意見はどうだ?」
その問いに榊原は答える。
「扉を開けた順だろう。
要は扉を開けて何が自分に起こったのかを確認するのか、
もしくはもう部屋で自分に起こったことを確認して扉を開けたか。
それでこんな分かりにくい順番で名前が載っているんだろうさ。」
話しても無意味だろう、と小さく呟く本田や黒澤を他所に答えた榊原は
その問いかけに興味を持っている風だったが
残念ながら今の問いに気付けたのはわずかだった。
それはさておき。
未だ榊原に突っかかりそうな黒澤に対して進行役の岸谷は
口頭で素早く今何が起こっておりまたここの空間や出口のないことについてを話すと、
モニターの画面に黒澤の名前がつき姫川潤の右横に名前が並んだ。
本人もそういうことが起こったのかと渋々理解したようだった。
「じゃあ全員理解しまた座ったところでみんなに提案したいことがある。
それはまだ起き上がっていない者たちへの訪問だ。
モニターにも書いてあるように追加ルールが設けられている。
それは時間指定のない課題は、と課題を成功した人数が
全体の3分の2になった場合次の課題へと進むというものだ。
なおそれにより課題を成功させることができなかった場合には罰が用意される……
非道かもしれんが取り敢えずやりたい方に手を挙げてくれ。
―――見捨てないか、見捨てるか」
その言葉に誰かが水を差す前に榊原はふふっと笑いながら呟いた。
「確かにどういった罰が施行されるのかは確認しておきたいところだ。
死ぬなら死ぬであれだろうが、主催者側もそこまでド畜生じゃないだろう。
僕は見捨てるに一票だ。」
そんな!と言う駒川は叫ぶようにして榊原の意見に反対する。
「それだったらここに居ない人が可哀そうだよ!
それにここが抜ける確率が上がるかもしれないじゃないか!
だってだって―――」
「―――私は見捨てるに一票ね」
駒川の叫びの途中で彩都が手を挙げながら呟いた。
すると奇遇ね、と本田も手を挙げ同様に
駒川と岸谷以外のこの場にいる全員が手を挙げる。
「なん……で……」
「何でもなにも罰を確認できるのは俺らの今後の生命線にも繋がる。
そして何よりこの空間に来る前のあの暗闇の空間のこと……
挙手するしないにかかわらず全員が覚えてるだろ?
“実験対象者の中に我々実験室が仮定した人物が死んだ場合、
扉はすべて開放され実験対象者のみなさんには自由が与えられます。”
これって実験室とか言う奴らが俺らかもしくは
まだ部屋にいる奴らの中に殺したい人物がいるんじゃねぇの?
仮にも裏切り者と揶揄すれば意味合いとしちゃ合ってるかもしれねぇしな。」
その黒澤の言葉に手を挙げなかった岸谷はおい!と宥めるもその言葉を無視して続けた。
「今はここで駄弁ってるが俺はお前らと馴れ合う気はない。
だってその裏切り者を殺したいならその裏切り者自身も
殺されるかもしれないって分かってるだろうしな。
そんでもって裏切り者を殺すつもりでこの実験とやらを始めてるならこの中に、
実験室とかいう奴の一員が混ざってるかもしれねぇだろ?
そういや君はなんで手を挙げなかったのか教えてくれないか、岸谷”くん”よォ?」
「5対5で分かれたらまずいから俺はまず参加しなかっただけだ。
それにもしも誰かが挙げない場合なら俺は手を挙げるつもりだった。
閉鎖された空間で疑心暗鬼が起こればきっと今みたいに話すことは今後困難になる。
―――すまない、駒川くん。話はこれで終わりだ。
俺はここに残って来るであろう他のメンバーを待つ。他は各自に任せるよ」
と岸谷が言うとけっとふてぶてしい様子で黒澤は立ち上がって
宥める黒山に構わずにそのまま部屋へと廊下に歩いていく。
それに順応するように本田、坂城、姫川、駒川もまた部屋へと戻り
円卓のある広間には榊原、岸谷、霞沢、彩都、黒山が残ったが
空気に耐え切れず一言謝って黒山もそこから抜けて残るは4人となった。
そしてしんとした瞬間最初に口を開いたのは榊原だった。
「もしも……ほぼ全員の意見が助ける方に、
見捨てないに入っていたらこれ以降は君たちと関わるのをやめようかと考えたよ。
それで霞沢、彩都2人の意見は僕と同じかい?」
「榊原、君は黒澤の意見を参考にするかい?」
すると薄く笑い話し始める。
「するとも。しなくてはいけない重要な事柄だしね。
彼―――黒澤は良いところまで頭は回っていたが
自分の感情が入ってしまって碌な説明にはなっていなかったな。
お陰で駒川は納得せずに帰っていったか。
確かに誰が裏切り者であり実験室とやら主催者側の人間かは分からない。
その状態でもしも訪ねて殺されでもしたらたまったものじゃないし、
それにあちらもそれを警戒していると考えても問題ないだろう。
なら待つのが優先順位は高い。
それに見捨てると言ってもそこで区切るというわけじゃない。
これは岸谷、君の言い方が悪かったな。
それに……ここに集まった5人は比較的頭が良いと伺える。
―――なぁ?そうだろう、黒山」
その問いに廊下から躓く音と小さい悲鳴を上げてからその男は現れた。
なお現れたのに対して周囲は驚く様子は見せていない。
「……いつ?」
「はじめから、だ。
行くと誤魔化して足音がしなかった。」
その一言に霞沢は恐るべし地獄耳と納得し黒山は驚きつつ怖がる。
すると続けて榊原は呟く。
「別に自分の命を優先する上でも盗み聞きという姑息な手段は良いかもな。
だが相手が悪い。」
「すみません……でも!どうして手を挙げたのかを知りたくてつい。」
その答えに溜め息を漏らしながらまぁ良いと切り替える榊原。
すると彩都が耳打ちをする。
お?恒例の?他者の紹介??
「―――なんか失礼なこと考えてない?」
エスパーかな?
「いや、なにも無いけど……?」
「そう、なら良かったわ。
それにしてもここでみんなの中が散開するのはある意味定番みたいな展開ね。
まぁ良いのだけれど。
で、私が覚えるためにもさっき来た3人だけど、まず黒澤からだけど、
彼はさっきも見たけれど典型的な一匹狼タイプね。
とても目が鋭くて多分彼も自覚があると思うほど
怒っているように見られる顔立ちをしてたわね。
赤に近い黒色の短髪に……あとは身長的には男の平均って感じかしら。
―――黒山くん……は正直良い印象はないし逆に悪い印象もない。
容姿はこの中でも若いし少年のような顔立ちをしていて
灰色に近い黒の髪を持ってるとして……うーん……」
と説明の途中で彩都は黙り込む。
気になって傾げる霞沢に一言ごめんと言ってなおった。
その際霞沢は彩都の”見られていた気がする”という言葉を耳にしたような気がした。
「……続けるわね。
姫川さんは華奢でお淑やか……というよりはとても
落ち着いた気弱な雰囲気があるわね。黒い長髪に中性的な顔。
そして喋ることは出来ないから手話で話している。
とまぁ私が見たみんなのイメージはこのくらいかしら。」
するとそう締めくくると榊原が待っていたかのように
霞沢と彩都を見てもう良いか?
と呟きながら彩都の説明にまた説明を付け加えた。
「これは本人の前で話す事柄だが姫川は声が出ないから話せないというわけじゃないぞ。」
「と言うと?」
岸谷の返事に榊原は語る。
「姫川は声を出せる。
―――だが声を短時間でも出し過ぎると喘息になって
喋ることが困難になるそうだ。
本人もそれを知っているしだから敢えて喋っていない。
だから手話で会話しているそうだが、それでも伝わらないときには
スケッチブックなんかを用意してそこに書いて伝えているらしい。
で、話を本題に戻すが黒山の問い……手を挙げた理由についてだったな。
これは岸谷、お前が答えた方が良いだろう。」
“―――だが”の前でこの場にいる榊原以外の4人は驚くが
そのまま話を続けた榊原は手を挙げた理由についてを岸谷へとその回答を回した。
「姫川のことは?」
岸谷のそんな問いに榊原は本人にそう言え、
俺も付き合うからと話を区切りいよいよ話は本題に入った。




