レヴィアタン②
湖にレヴィアタンが叩き付けられる。
「GYUAAAA!」
「まずは挨拶だ。」
魔力を込めた一撃にレヴィアタンは悶える。続けてシュウは''流水の型''を解除する。途端にとてつもない重力によりシュウは下へ引っ張られていく。
「''古式 崩山の型 毀壊''」
重力により威力が増した拳がレヴィアタンの腹に決まる。
「GYUOOOO!」
「クッ、堅いな。ダメージは通ってるようだが、時間がかかりそうだ。」
「GYARUUU!」
湖の水が無数の槍となり襲ってくる。
シュウはすぐに''流水の型''に変える。
「''魔法消去''」
水の槍が次々にただの水へと戻っていく。
「これには、通じるんだな。」
のしかかる重力に対して効かなかったことを思い、苦笑する。
「GARUOOOO!」
空を暗雲が覆い、火の雨が降ってくる。
「GYALUUUU!」
さらに落雷がシュウを襲う。
「これは…手数が足りないな。」
シュウは''天駆''によりレヴィアタンから離れる。しかし、レヴィアタンも逃しはしない。水の槍、火の雨、落雷がシュウを追尾してくる。
いくら''魔法消去''で対処していってもキリがない。
「こっちの方が効率的か。''魔装強化''」
全身にさらに多くの魔力を注ぎ込む。魔力が身体から漏れ、シュウが淡く光る。
漏れた魔力がレヴィアタンの魔法を弾く。
「GYU?」
レヴィアタンはなぜ自分の魔法が効かないのか分かっていない。
シュウは''縮地''により攻め込む。それにレヴィアタンは火の球を吐き、対抗する。しかし、シュウには効かない。
「''古式 手刀''」
シュウは''切断''スキルにより斬りかかるが、通らない。
「刀か、せめて棒でもあればな…」
剣術で斬れそうなんだが、と思うがないものは仕方ない。
「別の場所か…セオリーだと口内だが、やってみるか。」
シュウは口を目がけて、駆け上がる。
レヴィアタンもただでは行かせてくれない。水の球で撃ち墜とそうとする。例によって効かない。だが、シュウの狙いは分かったようで、その鋭い歯で口を守る。
シュウの手刀は歯に弾かれた。シュウは舌打ちをし、離れる。すると、レヴィアタンは空へ飛び、一つ咆哮を上げた。
「GYALUOOOOO!」
周囲の重力が急に弱くなる。
重力が、元に戻った?いや、元より弱くなってる!
シュウは勢いよく砂に突っ込んでしまった。
「くそっ、どうしようもなんないな…」
''流水の型''は重力を元々の負荷になるまで受け流しているだけだった。すなわち、負荷が大きい分には対応できるが、小さくなるとどうしようもない。
「GYALUOOOOO!」
レヴィアタンがさらに咆哮を上げる。レヴィアタンの口から黒い球体が現れる。
「何だ?」
黒い球体が空中に制止する。そしてとてつもない引力がシュウを襲う。
「…ブラックホールかよ!」
球体に水や砂がどんどん吸い込まれていく。
''魔法消去''を使用するが消えない。
「何で、ちょくちょく効かないんだよ!」
''魔弾''を撃つが単に吸い込まれるだけだった。
シュウは吸い込まれないよう、後方に全力で走る。
「GYU,GYU」
レヴィアタンは自分の魔法がやっと通じて嬉しそうである。これをシュウが見れば確実にキレるだろうが、今のシュウには見えていない。
「せめて俺を食いに来てくれれば楽なだがな。」
シュウは走りながら必死に考える。
今、俺が使えるやつでこの状況を打破出来るのは何だ?どの組み合わせだ?考えろ。
流水の型か?いや、それだけじゃ決定打にならない。そろそろ身体が持たない。この一回で決められるような何か?
………そうか!これが最善だ!
シュウは走るのをやめた。引力によりブラックホールに近づいていく。
ブラックホールが目の前まで迫る。
「''縮地''」
吸い込まれる直前、''縮地''により球体をスキップする。そして、さらに連用してレヴィアタンの目の前までたどり着く。
レヴィアタンは、巨大な炎の塊を作り上げていた。いきなりシュウが現れたことにより反射的に投げつけて来た。
シュウは''縮地''によりやり過ごす。そして無防備になった口ではなく、眼を狙った。
「念のため、な。''古式 貫手''」
手を突っ込み、魔力を流し込む。レヴィアタンは痛みにより暴れる。
シュウは振りほどかれぬよう必死にしがみつきながら流し続けた。
「GRULAAAAAAA!」
レヴィアタンの口から多数のブラックホールが出てくる。
様々な方向からの引力がシュウを引き裂こうとする。
「くっ、もう少しだ。もう少しで…」
シュウの背中から血が流れ始める。
「…この量でどうだ!''崩壊''」
シュウはすぐさまレヴィアタンから離れ、''縮地''によりブラックホールの範囲外まで辿り着いた。
そこからでもレヴィアタンが消滅していく様は見ることが出来た。レヴィアタンはかなり重力をかけているようで空間が歪んで見える。
「LUAAAAAA!」
ついにレヴィアタンが消え去った。
『レベルが48に上がった。』
『ユニークスキルが解放された。ユニークスキル''黒''』
「レベルが上がったか、」
ユニークスキルはもう少し早めにくれよ。シュウはそう思い、投げやりに腰を下ろした。
「はあ、」
シュウが''魔装強化''を解除すると腕や足から出血した。
「主人様、大丈夫ですか?」
「お疲れ様です。身体が耐えられませんでしたか。」
ザールたちがやって来た。
「ああ、二度かけたのが効いてる。」
「少々お待ちください。
永遠なる火の鳥よ!その爛々たる生命の雫を、慈悲たる恵を!火魔法''不死鳥の涙''」
シュウの身体が優しい炎に包まれる。
「悪いな。」
「お気になさらず。」
「主人様、よくあのレヴィアタンを倒しましたね。」
ザールが嬉々として話す。
「重力魔法を無理矢理攻略するとは、驚きましたよ。」
オロバスもそれに続けた。
ん?
「もしかしてオロバス、お前''魔法消去''がユニークスキルに効かないこと知ってたか?」
「それに気づきましたか。」
オロバスが関心したように答えた。
「ああ、落ち着いて考えれば効かなかったのは重力魔法関係だけだったからな。」
そういうとオロバスが説明を始めた。
「…というわけでございます。」
「はあ、なるほどな。」
「私も確信はしておりませんでした。まあ、よかったじゃないですか。不測の事態、というものを体験できて。」
まぁ、サタンと戦う前に知れてよかったが。
「これで、サタン様と会えますね。レベルも上がったようで、ユニークスキルも手に入れたようですし。」
「ああ、だが少し休ませてくれ。眠い。」
「よろしいですよ。お休みなさいませ。」
一応、寝る前に
「ザール、オロバスを見ておいてくれ。」
監視を頼んでおく。
「任せてください。実力的あれですけど。」
「用心深いのは良いことですよ。」
「頼んだ。」
そう言ってシュウは眠りについた。