VSレヴィアタン①
本日2本目です。
「嫉妬の大罪、レヴィアタン?」
「傲慢、強欲、色欲、嫉妬、暴食、憤怒、怠惰の名を冠するユニークスキルを持つ者の総称が七つの大罪です。レヴィアタンはそのうちの嫉妬を冠しています。」
聞いたことがあるな。
「でも何でそいつと戦わないといけないんだ?」
「レベル上げと経験のためです。貴殿は単純な戦闘経験は豊富なようです。」
戦闘、というか組み手なら結構ある。親父ともよくやってたし、他の流派の人ともやらされていた。
「ですが、魔法を交えた戦闘ともなると不安があります。なので今回ユニークスキルをもつレヴィアタンと戦い経験を養ってください。サタン様も七つの大罪に含まれます故。」
確かに、オロバスの大規模魔法には死にかけたし、魔法を使うやつと戦ったのは二度しかない。
「レヴィアタンが相手なのは二つ理由があります。一つ目がレヴィアタンが悪魔の中で唯一知性を持っていません。」
「知性がない?」
「はい、知性がないためすぐに復活するので練習には最適です。これまで多くの悪魔が戦っています。しかし、弱いという訳ではありません。単独でレヴィアタンと戦い勝利した者は王達や他の七つの大罪以外では片手で数える程度しかいません。これが二つ目の理由です。」
「それほど強いから倒した時のレベルの上がりが大きい、と。そうゆうことか。」
「その通りでございます。」
サタンとより実力が強いやつと戦うのか。少し燃えるな。
「わかった。案内してくれ。」
「その前にお待ちください。これをどうぞ。」
オロバスが服を差し出してきた。
「その格好では少々。」
シュウの服がボロボロなのを見かねたのだ。しかし、戦闘するのに執事服はないと思う。
オロバスは気持ちがピシッとしていいですよ、なんて言っていたがそうは思えない。服はどこから持ってきているのだろうかなどと思ったが、後で聞くことにした。
「それと、もう一つ。水の女神よ!その恵の水を以ってして、我らを癒し給え、水魔法''水神の恵''」
シュウ達の身体が癒される。オロバスの指も元どおりになる。
「すまない。…てか、お前水魔法も使えたんだな。」
「他にも闇魔法と土魔法も使えますよ。」
オロバスはさも当たり前のように答えた。
「今度やったら俺が負けるかもな。」
「機会がございましたらやりましょうか。」
こいつレヴィアタンに勝ったことあるんじゃないか、とシュウは思ったが口にはしなかった。
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しばらく歩くと大きな湖が見えてきた。
「あそこにレヴィアタンが寝ています。私達はここから見ていますので。」
「わかった。」
シュウは湖に歩いて行った。そこで一つのことに気づいた。
「この湖、思ったよりもでかいな。直径1キロはくだらないぞ。」
湖がこのぐらいの大きさなら、レヴィアタンはどんだけ大きいんだよ!と思う。
歩き進み湖に近づいていくが段々と足が重くなってくるように感じた。
「なんだ?足が砂にとられているわけでもないし、体自体が重くなる感じだ。」
疑問を感じたが、取り敢えずレヴィアタンを叩き起こす方を優先した。
「''魔弾''」
シュウは湖に向けて放つ。しかし、魔弾は徐々に失速していき湖の手前で落下した。
「どういうことだ?もしかしてユニークスキルか?」
「貴殿の主人は気づいたようですね。貴方も知ってるでしょう、レヴィアタンのユニークスキルは。」
「はい、''万釣なる嫉妬''という重力魔法ですね。」
「ええ。さて、どう攻略しますかね。」
「''魔法消去''じゃないですか?」
ザールはそれしかないだろうと思った。しかし、オロバスの考えは違うようだ。
「それが通じたら、ですがね。」
シュウは段々と答えに近づいていた。何度か魔弾を打つことにより漠然とだが考えていた。
「体自体の質量が増えたわけでもないのに重くなっている。魔弾もそうだ。この世界にそんな概念があるかはわからないが、重力か?レヴィアタンのユニークスキルは重力魔法、いや重力操作か?どちらにせよ消し去るだけだ!''魔法消去''」
シュウは自分周りにある魔力を拡散させた。しかし、重力の負荷は変わらない。
「なぜだ?失敗した感じはしないが?」
「''魔法消去''が発動しない?」
「ええ、おそらく。」
驚くザールにオロバスは冷静に説明した。
「正確には、効かないですがね。貴方はユニークスキルは何だと思います?」
「神から与えられた特殊なスキル、だと思っています。」
「その通りです。我らを生み出した神が与える''スキル''です。いいですか?スキル、ですよ。」
「えっ、まさかレヴィアタンのは魔法じゃない?」
「厳密には、というのが付きますがね。魔法というのは魔力を特殊な効果のついた火や水などに変化させたり、それを操ったりすることです。対してユニークスキルの魔法は魔力を介していません。現象自体に直接干渉できるスキル、なのです。貴方、二百年くらい生きているのに知らなかったのですね。」
オロバスは少々呆れてしまった。
中位悪魔にユニークスキル使えるやつが居なかったんだよ、と思ったがザールは言い返せなかった。
「まぁ、結果的には同じように見えるのでどちらも大義的に魔法、という事になっているのです。」
「ということは、魔力を消費しないんですか?」
「はい。必要となるのは走るときの体力、のようなユニークスキルを使う体力です。」
ザールは改めてユニークスキルの恐ろしさを感じた。
一方、シュウは攻略の糸口を見つけていた。
ここに来るまでの間、どうしたら魔弾の速度が上がるか考えていた。そしてシュウはゴム鉄砲をヒントに思いついた。ゴム鉄砲はゴムを強く引っ張るほど速くなる。ならば、魔弾を撃つ手の方に魔力を注いでみたらどうだ、と。
「まだ試してなかったから、今試してやろう。''魔弾''」
シュウは手に魔力を注ぎ、放った。するとどうだろう、減速するどころか通常よりも速くなっていた。そして湖に着弾し、爆発したら。水飛沫が飛ぶ。そして、湖の主が現れる。
「GYUOOOO!」
東洋の龍のような姿をし、背に大きな翼を持ったレヴィアタンが飛び出してきた。
「初めましてレヴィアタン。ようやくお前を見れたよ。」
シュウにかかる重力がレヴィアタンの登場によりさらに負荷が強くなる。しかし、シュウは気にせず魔力を身体中に行き渡らせた。
「''魔装強化''」
魔力を筋肉に注ぎ身体強化に成功した。さらに''古式 流水の型 無常''により重力を受け流す。そして、
''天駆''と''縮地''を利用しレヴィアタンの頭上まで駆け上がる。
「成功だ!それじゃあ、戦闘の始まりだ!」
レヴィアタンの頭を思い切り殴り、湖に叩き落とす。