求人広告、猫かふぇ。
今日は、面接の日だ。
猫好きなあたし。たまたま見つけた猫カフェの求人広告を見つけて連絡をし、履歴書送り、相談した結果面接の日はなんと二月二十二日! 偶然か必然か……! あたしが勝手に作った日なんだけどね。
「……あ、ここだ」
“かふぇ にゃんと”と書かれた看板のある、木造り、木目の綺麗な引き戸玄関。暖簾が掛かっていてとても猫カフェなんかには見えない。
なんて言うかその……古民家カフェとかそっち系に見える。もっと言えば定食屋さんでもいける感じだなぁ。
服装よし! 化粧よし! 笑顔よし!
「よし!!」
意を決して玄関の今時珍しい引き戸を開ける。
「ご、ごめんくださーい……」
「はいはーい? ……あ、アルバイトの面接か」
出てきたのはクルクルとした茶色のくせっ毛が可愛らしい大学生くらいの男性だ。
なんか……猫っぽい?
店内も外装に相応しい木製の椅子と机があり、灯りも和紙を使った和風のものだ。
「はい、そうです。よろしくお願いします!」
「はい、ではここに座ってください」
「はい」
店主さんと思われる男性に促され、椅子に座る。向かって反対側に男性が座った。
「えーと、初めまして。僕は猫鳴と申します。貴女は松前胡桃さんでよろしいですか?」
「はい、そうです」
ふぅー、なんか緊張してきたっ!
ねこなりさんってどんな漢字書くんだろ? 気になるなぁ、そして羨ましいっ!
「はい。じゃあ……猫は好きですか?」
「勿論ですっ!」
「そうですか、それは良かったです」
満面の笑みで答えると、満面の笑みが返ってきた。わーキラキラオーラがー。
「好きな猫の種類は?」
「基本、どんな子も好きですか……ロシアンブルーが一番好きですね」
「なるほど……因みに僕は茶トラの猫ちゃんが好きです」
「あ、確かに可愛らしいですね」
おお、茶トラ! 可愛いですなぁ……♪灰色毛並みに青い瞳のクールなロシアンブルーちゃんがあたしは大大大好きっ!
やば、考えてたら顔熱くなってきた!
……と、言うか今さっきから気になってたんだけどここのお店……。
猫がいる気配がしないんだよね。
なんていうか、居る所には猫臭とかその痕跡が何かしらあるはずなんだけど……ここには無い。
「……はい。では、胡桃さん。明日からよろしくお願いしますね」
「……合格ですかっ!?」
「はい、よろしくお願いします」
「やっ……たぁ……! ありがとうございます!」
念願の猫カフェ勤務だぁ……! あ、猫について聞いてみよ。
「あ、あの……ねこなりさん」
「何でしょう?」
「……ここには、どんな猫ちゃんがいるんですか?」
ふっ、と笑ってねこなりさんは言う。
「……猫? 貴女の目の前にいるじゃないですか」
目の前に居るのは、__ねこなりさん。
「う、ぅえ……?」
だんだん、ねこなりさんの髪がモゾモゾ動いて猫耳みたいな形を成す。黒い瞳は綺麗な黄色を帯びていく。
そして、ねこなりさんは最後には猫耳が生えたもふもふクルクル髪で、人間ではあり得ないトパーズのような色の瞳で、背の後ろに見えるのは__先が二つに分かれた尻尾。
「僕は__猫又ですよ」
「__っふぁぁぁぁあ!!!」
……? 視界に広がるのは、見慣れた自分の部屋。
「夢、かぁ……」
なるほど、猫が経営してるから猫カフェか。これはまたびっくり。
あー……夢でも覚めなきゃよかったなぁ。ねこなりさんの耳、触ってみたかったぁ!
「……って今日は? ……あー! 二月二十二日じゃん! わーもう八時だぁぁぁぁああ!」




