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悪魔のささやき

「こ、こここ、これはっ! これはディンさん! ひょっとして、もしかして!」


 数台の巨大な機械の群れ。その姿に興奮を隠しきれないパルムは、早速その鳥型機械の足元やら翼やらを調べ始めたディンの肩につかみかかる。


「ディンさんディンさん見てください! 大発見! 大発見ですよ! これはまさに古代遺跡の内部に隠された、秘密のっ! 伝説のっ――! ……ええと……コホン、ちなみにディンさんは何だとお考えですか?」


 尽きることのない知識と知恵を持ちながら決して慎重さを忘れない金髪の冒険家は胸に秘めた結論をひけらかすことなく、ピスト教の教えたる大いなる愛と優しさをもって、相棒の推測を促した。


 すると、翼から背中へとよじ登っていた相棒は一端ふうと息を吐き、それからじっとその鳥達の鼻が向けられている蔦に覆われた空を見て。


「……乗り物だ」


 と、信じられないとでも言うように小さく頭を振りながら呟いた。


「ほうほう乗り物ですか。成程成程……つ、つまりこれに古代人達が乗っていたと言うことですね!?」


「ああ。ほら、あんたも見てみろ。大分ぼろいが、背中に自走車みたいな座席とハンドルがある」


 翼の根元に腹ばいになった相棒の手を掴んだパルムシェリーは、懸命に大きな鳥によじ登る。


「……はぁ……はぁ……ふぅ。ほ、本当です。と、というこは……飛ぶっ! これは飛ぶのではないでしょうか!? 鳥のようにっ! 空をっ!! 空の上の国に向かっ――へぷっ」


「かもな。まあ、お空の国は別として、こんだけ高いところに人間が住んで、どういうわけか地面の上が使えないんじゃあな。もしかしたらこいつに乗って、山から山へ人やら物やらを渡してたのかもなって話だよ……空の上をさ」


 自分の言葉に呆れた様な口ぶりで相棒の高い鼻をつまむ男の顔は、どこかとても楽し気で。

 彼の腕をぺしぺしと叩いてようやく自由を取り戻したパルムシェリーが、さらなる空想を語ろうとしたところ。


「で、どうするパルムシェリー?」

 と彼は実に悪い顔で相棒を振り返り。


「はい? どうする、と言いますと?」


 問い返した冒険家の前で、身軽に運転席へと乗り込んだ彼は。


「はっ。見ろよ、これを」


 言葉と共にトン、と指が置かれた先は、計器の類と思われる壊れかけの針などの横に配置された薄暗いガラスのようなもので――。


「ええと……これって……あの紋様――え?」


 その手元を覗き込んだパルムシェリーが、まさかと思って顔を上げる。

 すると黒髪の悪者は、にやりと笑いながら。


「このまま下に逃げるか、それともあの女の板を奪って――飛んでみるか」

「う、奪うだなんて……やっぱりそんな悪いことを……だ、駄目ですよぅ……」


 うわごとの様にそう言って己の頬に両手を当てた善意の冒険家は、しばらく相棒の悪い笑みを見つめたまま彼の強引な勧めがやってくるのを待った後。


「……ほ、本当に動くのですか?」


 と、こらえきれなくなった好奇心に負けるかのようにもごもごと言葉を口にした。

 するとディンはカラカラと笑いながら。


「さあな。でも動いてるじゃねえか、この遺跡はさ」


 己が跨る機械のように、大きく両手を広げて見せた。


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