耀く饅頭
突然【饅頭怖い】を思い出したので1つどうぞ
美味しそうな饅頭が目の前に落ちている。
これが普通の饅頭なら、勿体無いと言ってすぐにでも食っただろう。
だが、残念なことにこの饅頭は普通の饅頭なんかではなかった。
この饅頭はついてくるのだ。俺の後を。
必ず後ろにいるというわけではない。
俺の近くに必ずいるのだ。
空から降ってきたわけでもなく、竹から出てきたわけでもなく、【まんじゅう!】と言いながら生まれてきたわけでもない。
え?最初から居ましたけど?みたいな態度でそこにある。
饅頭を無視して歩くことも出来る。
が、ついてくるのだ。ずっと。
饅頭を見つめたまま後ずさって離れた時もあった。
だが、無意味だった。
ちょうど見えなくなった時に当たったのだ、足に。
どこに行っても、そこにいる。
しかも、他の饅頭と区別がつくのがまた厄介だ。
何故だか分からないが、他の饅頭より輝いて見えるのだ。
夜など、蝋燭なんかより俄然明るい。
おかげで、出ていく金が少なくなったのが良かったといえば良かった。
しかし、他の奴らからするとこの不可思議な饅頭は見えないらしいのだ。
ある時、仲間達と自分の怖いものを話した時があった。
皆が蜘蛛やら蛇やらを答えるなか、俺は答えることが出来なかった。
しかし、あまりにもしつこく聞いてくるので遂に「饅頭が怖い。」と、白状したところ仲間達が嫌がらせに俺の家に大量の饅頭を投げ込んできたのだ。
だが、俺は元々饅頭が大好きだったのだ。
それが、最近付きまとわれている饅頭のせいで食う気が失せていただけである。
のだが、久しぶりに普通の饅頭を見たせいか俺の手は自然と饅頭に伸びていた。
そこからはもう速かった。
外にいる饅頭を投げ込んでくれた仲間達に聞こえるように「怖いものが降ってきた。こんなものは食ってしまおう。」といって、部屋を埋める饅頭を一つ残らず食い尽くしてしまったのだ。
もう一生分の饅頭を食った気がする。
外から、お前さんは本当は何が怖いのだ!という怒鳴り声がきこえたのと同時に目の前にあった食う気もない耀く饅頭が美味しそうな一杯のお茶に変わった。
「嗚呼、このへんで濃いお茶が一杯欲しい。」