超地味系女子と超自己中男
「何か用ですか?」
「…、いや、佳奈ちゃん可愛いなって」
この図々しくてポーカーフェイスで超自己中男はなぜだか毎日私の後をついてくるのだ。いわゆるストーカーだ。
「ストーカーですよね、神崎君」
「いや、俺は佳奈ちゃんを守ってるんだよ」
「それ、建前ですよね」
「そんなわけないじゃん?」
「ああ、そうですか」
私はもういい加減面倒臭くなってきたので、話を畳むことにした。
「佳奈ちゃんは俺のどこが好きなわけ?」
「何回もいってますが、好きじゃありません。私があなたみたいなチャラチャラした人を好きになるとでもお思いですか?」
「うん」
「そんなわけないでしょう!?」
またこの男のペースに飲まれてしまいそうになった。この男、神崎始は私、大森佳奈と同じクラスの出席番号が前後という理由だけでよく話しかけてくる。まだ高校に入学して半年だというのに"佳奈ちゃん"などと呼んできて、馴れ馴れしいことこの上ない。
ついこの間までは"大森さん"と呼ばれていたはずなのに。
私はいわゆる"地味系女子"というやつで、必要以上には人とかかわらない、目立たないようにしているのだ。なんでって?それは決まっている。"女子は面倒臭いからだ。"
まぁ、こんな面白みのかけらもない私についてきて必要以上に絡んでくるこの男も大概だと思っている。
「神崎君はどうして私についてきたりするんですか?こんなに面白みもないのに。それに周りの女子みたいに目立たないし、陰キャラなのに」
「っははは!佳奈ちゃんそんなこと自分で思ってたの!?マジうけるんだけど!」
「何が面白いんですか!?」
「いや、だってそんなに自分のこと見えてる風にいってるけど、実際佳奈ちゃんは自分で思ってるほど陰キャラじゃないし、面白いのに。自信がないだけなのか、それとも前に誰かに言われたとか?」
それには思い当たる節があった。そう、私は中学生の頃いじめられていた。毎日がつまらなく、学校に行く気も失せた。高校はそんな奴らよりレベルが上の所にしようと必死で勉強した。そして現在に至るのだ。
「うん、前にね…」
「そっか。そんなことないけどなー。俺見てきた限りでは佳奈ちゃんは可愛いし、面白いし、他の女子みたいに騒がないから楽で良いんだけどな-」
「ちょっと神崎君のこと見直したかも」
そんなことを言ってしまったらこの男は調子に乗ると分かってはいたが、言わずにはいられなかった。だって、本当に見直したから。
「そう?じゃあ俺とつきあお」
「!?」
あまりにも自然でいて突飛だったので私は驚いて声が出なかった。いつもふざけてばかりいるこいつのことを一回で信じろなんてこと自体無理な話だ。
「それって、ノリ的な感じですか?」
「んなわけないじゃん。ああ、そっか俺いっつもふざけてばっかりいるから信じてもらえてない?」
「ごめんなさい、正直信じられないです」
「そっかそっか。まぁ良いんだ。一回で信じてもらおうなんて思ってなかったからね-」
「でもごめんなさい、はい。ごめんなさい」
「何で謝るのさ。あ、まさか俺振られてる!?」
「…。ごめんなさい」
「しゃーなしだわ。これから俺のこと好きにさせるから、覚悟しといてね」
「!?」
なにこの強気発言。こいつってこんなに俺様キャラだった?あれ?何か気にしてる?おかしいな、さっきまでただのうっとうしいヤツだと思っていたのに。
こいつの罠に上手くはめられてはいけない!そう、これは冗談で言ってるだけ。そうそう、本気にしちゃだめ。
「俺のことちょっと気になった?そんなに必死にブレーキかけなくたっていいじゃん?俺、本気だよ」
心の中でこんなやつなんて。と何処かブレーキを掛けていたのを見透かされたみたいで気分が悪かった。
それでいてどこか体が熱かった。
「まぁ覚悟しといてね。佳奈ちゃん?」
そう言ってこのポーカーフェイスのチャラチャラした男は微笑むのだった。
「誰がアンタなんかと!覚悟なんてする必要ないわ。もう出来てるもの」
「え、それって…」
「もう知らない!私帰りますよ」
「待ってって、佳奈ちゃん!惚れた?惚れた?俺に惚れたかにゃん?」
「もううるさいです!」
私は照れを隠すのに必死だった。
…FIN…
久々の短編です。
最後まで読んで頂き、ありがとうございます!
また番外編が書けたらいいなと思っています!
ではその時まで。See you next time!
めんたこ