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今年初めての方には、あけましておめでとうございます。
それ以外の方には、こんにちは!どうも、ぺぺだよ!!
いまいち納得がいかないかもしれないけど、もう気にするな!!どうせ、行き当たりばったりの見切り発車号なんだから☆
…更新遅いくせに、このクオリティ。もうぺぺに期待とかしないでくださいorz
そして、催促されたから更新ししたんじゃないんだからねぇぇぇぇぇ(照)
キリキリとした鈍い痛みに、沈んでいた意識を揺り起こされて、ヤヤはゆっくりと目を開けた。
ここ一ヶ月ほどで、見慣れたものになった天井を虚ろな瞳に映して、深くため息を吐く。
(見慣れたくもなかったわ…)
そんなヤヤの心の呟きに応えるように、ヤヤの顔に影が差し声がした。
「随分やられたな」
おおよそ人が発したとは思えないしゃがれた声がその影から聞こえ、ヤヤは少しずつその影に焦点を合わせた。
「…相変わらず、目覚めに悪い顔ね」
ブスッとしながらヤヤが洩らす言葉にヒューヒューとした耳障りな音を交わらせながらクツクツと笑う影は、ヤヤを覗き込んでいた体を起こす。
その影をヤヤは視線だけで追い、またため息を吐くのだった。
「薬だ、飲んでおけ」
影の起こした体が部屋に差し込む日に晒される。全身を黒装束で包み、黒い包帯で顔を覆ってるその人物は、包帯の隙間からは爛れた皮膚が見え隠れしており、皇帝の正妃のために準備されている煌びやかな対の間にはひどく不釣合いなものである。
そんな明らかに怪しい人物に驚くこともなく、ヤヤはその人物が差し出したいかにもまずそうな液体の入った小瓶を受け取るために、身を起こそうするが吐血したためかひどく重たい頭を軽くあげただけで力尽きる。
「…飲めないわ」
顔を顰めて、自由にならない己の体にさらにため息を吐くヤヤ。
「ちと、遅かったか?」
そんなヤヤを見ながら気まずそうにその人物はぼりぼりと頭を掻くと、ヤヤの寝ていたベッドに乗り上げヤヤの背に片手を差し込むと、軽々とヤヤの半身を起こした。そのまま、もう片方の手に持っていた小瓶の蓋を開け、ヤヤの口にその瓶を押し込むと中の液体を有無を言わせず飲ませる。
「っぐぅ!!」
抵抗するつもりはなかったのか素直にそれを口にしたヤヤではあったが、相当の苦味が口の中に広がり吐き戻しそうになるのを必死に堪える。それを楽しげに見つめる原因の人物は中々のサドっ気が覗えた。
「クロノス…、いい加減味の改良をお勧めするわ」
何とか飲み終え、クロノスと呼ばれたその人物に丁寧に寝かされたヤヤはじと目になりながら訴えた。
「馬鹿だな。するわけないだろう。いやいやながら飲ませるのが趣味なんだ。わざとだ、わ・ざ・と」
包帯の奥に不穏に光る瞳にヤヤは呆れ返ってものも言えなくなる。
そもそもこのクロノスという人物は昔っから、何かにつけてヤヤの嫌がる顔を見るために無駄な努力を重ねる男だった。
ヤヤとクロノスが出会ったのはのはヤヤが五歳の時。
末端貴族と言えど、市井の者よりは裕福な暮らしをしていたヤヤの実家は、そこそこの屋敷を構えていた。屋敷には他の貴族とは比べようもないぐらい小さいものではあったが中庭や裏庭があり、人が一人隠れるには十分な広さがあった。
そんなヤヤの実家の裏庭に全身血塗れで倒れていたのがクロノスだった。
その血塗れのクロノスの息も絶え絶えな姿を一番に発見したのが、幼いヤヤである。五歳の子供にはきつい大量の出血と血の匂いに塗れたクロノスであったが、市民とほぼ変わらない生活をしていたヤヤは、その時既に死は常に身近にあることを知っており、どうすればこんなに傷つくのかが疑問に思うだけで特に恐怖の対象とはならなかった。
その後、あれやこれやとクロノスとの間にあり、ヤヤが気づいたときにはクロノスはヤヤを主と仰ぎ、常にヤヤを守ってくれる存在となっていた。
しかし、そんな存在になってくれたはいいが、クロノスの趣味である薬学においてヤヤは格好の餌食となり、妙な液体を飲まされてはたまに寝込むといういらないオプションまであったのは今ではいい思い出になるのかもしれない。
ちなみに、クロノスという名はヤヤが当時名無しだった彼に与えた名である。
「しかし、血を吐く程やられていたなら気づきそうなものだがな」
少しの間、クロノスとの出会いに思いを馳せていたヤヤのベッドの端にいつの間にか腰を降ろしていたクロノスは、ヤヤの腹部を見ながら首を傾げている。
「臓腑の痛みが慢性化してるせいで、ある程度は平気で我慢できるのよ。多少痛みがきつくても、だんだん慣れてしまえば、どうってことないわ」
ヤヤもクロノスと同じように自分の腹部を見下ろしながらその問いに答える。
そう、ヤヤの吐血の原因はヤヤ自身がよく知っているストレスからくる胃潰瘍が悪化したせいであった。
「まあ、俺の薬を飲んどけば後は安心だろ」
視線をヤヤに戻したクロノスは、ヤヤの頭をくしゃりと撫でると、その包帯の隙間から見える爛れた唇を歪ませた。
奇妙ではあるが、ある種、穏やかとも言える沈黙が流れたあと、おもむろに口を開いたのはクロノスであった。
「残党狩りを始めるぞ」
その言葉とともに穏やかな空気は一瞬にして消え、ヤヤとクロノスは静かに見つめ合う。
「…鼠を仕込んだのはあなた?」
ヤヤがクロノスをしっかり見据え問いかける。
「いい餌になっただろうよ」
そんなヤヤを三日月ように撓る瞳で見返すクロノスは心底可笑しそうだった。
「やつらには到底真似なぞ出来まい?『幽界』を『死に花』を扱えるのは、ただ一人。この俺だけ。十五年前に組織をぶっ壊してやったが、小物を残したのは間違いだったな」
可笑しそうであるのに、その瞳の奥は決して笑ってはいない。
「そろそろお出ましになる頃合だから、派手に演出したかっただけなんだが、まさかお前があんなにタイミングよくぶっ倒れるとは思わなかった」
クツクツと笑い、それに混じってヒューヒュー洩れる音が、クロノスの不気味さを引き立てる。
「あぁ…、楽しくなるなぁ、ヤヤ。俺の唯一のご主人様」
グッとヤヤに顔を近づけて、ヤヤの瞳を覗き込むその様は、まるで狂人のよう。
そんなクロノスを二・三度瞬きをしただけで、平然と見返すヤヤはポツリと零す。
「クロノス…、鼠って調教出来たの?」
ヤヤの明後日な質問に、クロノスの三日月型の瞳は横棒に変わる。
「俺に不可能はないんだよ」
そのまま、ヤヤにでこピンを食らわすとゆっくりとヤヤから離れ、気づけばその姿は部屋に溶けるようになくなった。
「…痛いわ」
ヤヤはクロノスにでこピンをされた額をさすると、静かに瞼を閉じる。
ヤヤの体調は薬を飲んだからといってすぐに回復するものでもない。
目の前を闇で覆いながら、今後について考える。
吐血してしまった以上、のんびりとことを構えていることは出来ない。我慢は出来るが、自分の命が関わるとなれば状況を改善しなければならないのは当然だ。
今まで、面倒くさいと嫌がらせに堪えてきたが、これ以上は無理であろうことは目に見えている。
ヴァンディットとセリウスが無能だとは決して思わないヤヤは、侍女の入れ替えがあることを予測して、ある人物を引き入れることを本格的に視野に入れ始める。
その人物に喜ばれるとは露ほども思わないが、リンクスに側にいてもらうことが出来ない以上、我慢してもらおうとヤヤは一人納得した。
もう突っ込まれるとどう答えていいかわからないぺぺです。
何をどう説明すればいいのやら、暗中模索、五里霧中でございます。
こんな本作品ですが、これからもお付き合いいただけると言うお方がいらっしゃいましたら、そらもうあなたは天使です!マイスウィートエンジェルンですん!!
次回は、ヴァンディットも出てくるよ。あと、ヤヤとクロノスのあれやこれやは長くなりそうだったので完全に端折りました!!そんな端折られたお話を読みたい方がいらっしゃいましたら、ご一報下されば閑話で書きます。書く予定ではありますが、それがないのとあるのでは、更新期間に差が出るというだけです。
…人任せでいつもすみません。
今年もこんなぺぺをよろしくね☆