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再び訂正!


えっ?一回で気づけよって?


…む、無理ですorz


正妃になりたいわけじゃないっ!!は、読者様の暖かいお言葉とご指摘で支えられているのです!


いつも、ありがとう!!

ヤヤがヴァンディットの肩に抱えられて連れてこられた先は、数時間前に後にしたはずの皇帝の私室であった。


昨夜も座ったソファーに腰掛けさせられ、目の前に差し出されたのは…自分の書いた書き置き。


ヤヤはどうしていいのかわからなかった。


ヴァンディットはというと、ヤヤを私室に連れてきた後、セリウスを伴い部屋を出ていってしまっていた。


(…で、どうしろと?)


訳もわからず、はぁっと重い溜息を吐いた。それから、額に手を当て軽く首を振るとそのままソファーに身を沈めた。


あまり行儀のいいことではないのだが、誰もいないのをいいことに身体を休める。


そのまま睡魔に襲われ、瞼を閉じるとスッと眠りへと誘われる。


ー随分面白いことになってるな


眠りの底に落ちる前に聞こえてきたのは、ヤヤの絶対の味方、その人の声。


ー面白がってないで、なんとかしてよ


言葉に出せたのかどうかもわからず、意識は闇に呑まれた。ただ、ヤヤに理解出来るのは、その人がヤヤの命に危険がない限りは何もしないということだけだった。




* * * * *




ヤヤを私室に閉じ込めたヴァンディットは、そのままセリウスを伴い執務室へと向かった。


あのまま、情事にもつれ込むのは簡単だったが、それでは本当にヤヤを壊しかねない。昨夜手加減したのは、この先もあの身体を楽しむためだ。衝動に任せて壊してしまえば本末転倒だ。


苛立つ気分を落ち着かせる為にも、執務に打ち込むことにしたのだった。


執務室の前に着くとイセルがおり、おやっと眉を上げた。


「陛…」


「陛下、お食事はいかがなさいますか?」


イセルが何かをいう前に、セリウスがヴァンディットに問いかけた。


イセルがおいおいという感じでセリウスを見るが、セリウスはそれを無視してヴァンディットの返答を待った。

セリウスにしてみれば、ただでさえ、ヤヤが後宮に戻っていたことに機嫌を悪くしているのに、イセルの不用意な発言でさらに悪くなり、とばっちりを受けるのはまっぴらであった。


「いらん」


簡潔に告げるヴァンディットは己で執務室の扉を開けると、さっさと中に入る。

それを一礼して見送るセリウスは、対の間にヤヤが入った時の警護と護衛の話をイセルとしなければならない事実に頭を痛める。


一人、事態を把握できないイセルはぽかんと口を開け、執務室の扉とセリウスを交互に見比べるのだった。


部屋に入ったヴァンディットは、執務を行うための机に近づくと、束になっている書類に舌打ちをした。

そして、乱暴に椅子に座るとその背を背凭れに預ける。執務に打ち込むつもりが、いざ書類の束を見ると気が滅入った。


ふっと、ヤヤの部屋を訪れたときのことを思い出す。


ヤヤの部屋に入って、まず目に付いたのは、金茶の髪と青い瞳の青年。夜会の折、ヤヤが探していた護衛の姿だった。そして、目に入る食事中だったと思われる皿。護衛の立ち位置と皿の数を見て、同じ食卓を囲んでいたと理解すると、目の前にいる護衛を斬って捨ててやりたくなった。


膝をつく侍女の姿を視界の端で捉えながら、護衛も慌てて膝をつく様を憎々しい思いで睨み付けてやる。そしてやっと、背後に座り隠れていたヤヤの姿を確認できた。


ヤヤはぽかんと口を開けており、左手にディディの腸詰めを刺したフォークを持っていた。その目が見る間にいっぱいに開かれ困惑を浮かべている。


何故部屋で待っていなかったのか?部屋に戻る元気があるなら手加減をしなければ良かったと思えば、それが責めるように口に出ていた。


見る間に青褪め首を振るヤヤの目はヴァンディットを捉えたままで、潤みの増した瞳はヴァンディットの嗜虐心を煽った。


今までの情事の相手は、快楽を追い求めるだけの道具に過ぎず、どんな感情も揺さぶられることはなく、ヤヤに対してそのように感じることに内心驚くヴァンディットは、その感情の赴くままにヤヤに手を出そうとした。


その時、連れてきたセリウスが間に入らなければ、己が何をしていたのかなど知りたくもない。


しかし、視線を逸らしたヤヤが何事もなかったかのように振る舞い出したのは、予想外だった。仮にも初めての情事の相手を前に、動揺すら隠したヤヤに苛立ちが増す。


セリウスの発言に気まずそうに答えるヤヤに、己の寵愛を受けた嬉しさは微塵も見られなかった。


もし仮に、ここでヤヤが恥じらいを見せていたなら、自分は優しく出来たのだろうかと考えるが、実際には恥らう姿は見てられず、さらには護衛との仲を疑うような発言をしてしまった。同じ食卓を囲んでいたという事実が、そういうことを考えさせたのだ。


自分がヤヤの初めてだというのを、自分こそが知っているというのにー。


しかし、その発言で護衛と見つめ合うヤヤに、その目に己が映っていないことに、ヴァンディットは考えることを放棄した。


ただ、何もかも許せなかった。己を見ないヤヤにも、ヤヤに見つめられ見つめ返す護衛にも。そして、初めての訳のわからない感情に揺さぶられている自分すらも。


ヴァンディットは深く溜息を吐くと、頭を振り、これまでのことを頭から追い出すと、机に向かい、積み重なった書類に手をつけた。


ー集中など出来はしないと思いつつも。

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