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閑話 とある警護兵たちの驚愕③

閑話終了!


次回より本編を再開させていただきます♪( ´▽`)

タニアはまず、ヤヤの部屋を目指すことにした。


門番は通常、先触れとして走ることがあるので特に持ち場を離れることを禁止されているわけではない。


ジークの話では、今は犯罪者扱いだが、後々厄介なことになりそうだと思い、どうか彼女たちの穏やかな時間が壊れないようと祈りながら走る。


ヤヤの部屋は、後宮でも奥の方にあり、部屋自体もあまり広くはない。


走りながら、時折聞こえるヤヤへの誹謗中傷に苛立ちを覚えながらも、普段は滅多に話せないリンクスと話せると言うことに少しだけ浮き立つタニア。


しかし、伝えるべき事がことなだけに、あまり悠長に話せない。そのことを少しだけ残念に思うのだが、ヤヤとリンクスはタニアたち、警護兵にとっては一種の癒しであり、それを守るためには我慢も出来ると思うのだった。


ヤヤの部屋の前の廊下に辿り着くと、部屋の前に呆然と佇むリンクスの姿が目に入った。


その姿はまるで迷子の子供のようで、タニアの母性本能がキュンと刺激される。

タニアの足音に気づいてか、リンクスがタニアを認めるとタニアはリンクスに声をかけた。


「リンクス殿!」


名前を呼べば、リンクスの瞳が僅かに潤み、タニアは抱きしめたくなる気持ちを必死で抑えた。


「ここにいてくれて良かったです。今、城の警護兵の方がいらしているのですが、リンクス殿をお呼びなんです。共にいらしてもらってもよろしいですか?」


気持ちを行動に移さないよう、慌てて要件を伝えるタニアは、リンクスが何か話そうとしていたのに気づかなかった。


それから、ここからが重要だと思い、周りを確認し人の気配がないことを確かめる。北の塔にいると思われているヤヤが城にいるとなると、また下らない噂が増えてしまうかもしれないと、リンクスに身を寄せた。


内心はドキドキのタニアだが、これは仕事と何度も己に言い聞かせ、リンクスに、


「側室様のお迎えにとのことです」


と、小さな声で伝えるとすぐに身を離した。


しかし、そうするまでもなくリンクスは矢のように走り出していた。


「リンクス殿っ!?」


それに吃驚したタニアは、リンクスの背に向かって呼びかけたが、既に聞こえておらず、リンクスの姿はあっという間に消えてしまった。


タニアはそれに対して、乾いた笑いを漏らすと、次いでため息を吐いた。


事がことなだけに、リンクスを責めるわけにはいかないが、少しぐらいは礼を言うなり、共に入口に向かうなりしてくれればいいのにと思うのはタニアの乙女心だ。


しかし、リンクスの主従愛を思い出し、無理だなと首を横に振ると、持ち場に戻るために走り出した。


少しの間だけだったが、リンクスと二人きりで話せたことを後でハンナに自慢しようと思うタニアであったー。




* * * * *




ジークがハンナの問いにより、もやもやとした気分で悩みながら乱れた息を整えていると、門の内側から転がるようにして出てきた男が掴みかからんばかりの勢いで、ジークに駆け寄ってきた。


「リンクスと申す!早くヤヤ様の元へ!」


開口一番に一気に捲し立て、ジークを置いて走り出さんばかりの勢いであった。


ジークはよもや男が出てくるとは思ってもおらず、些か呆気に取られたが、直ぐに持ち直すとついてきて下さいと言い先頭を走り出した。


ジークは現在の後宮の在り方を思い出し、余計に何故あの側室が寵愛を受けたのか疑問に思う。


今の後宮では、女性騎士だけでなく、男性騎士も少なからずいることは知っていた。しかし、数の少ない女性騎士は大半が後宮の警護に回り、残りは上級中級貴族の娘に充てがわれている。

男であるリンクスを護衛に持つ側室は自ずと身分の低いものに限られてくるのだった。


かの側室が下級貴族とわかり、その疑問は膨れ上がるばかりなのだが、後ろを走る男はさも高貴なお方を心配するかの形相であった。


その姿に、自分の疑問よりも早く側室の元に連れていかなければと思うジークは意外と面倒見の良い男であった。




* * * * *




一方、皇帝の私室前で変わらず警護を務めている男、名をライトという。


ライトはジークが、側室の護衛を呼びに行った背中を見送ると、足の震えが酷くなった側室を部屋のソファーまで連れて行った。


「側室様、私は外におりますので、何かございましたら声をおかけ下さい」


そう言って、私室の警護に戻ること数分。


中から、喘ぎ声らしきものが聞こえてきて、ドキリと身体を強張らせた。


先程、如何わしい妄想を恥じたばかりなのに、その妄想がグレードアップして蘇る。


(もしかして、昨夜の情事が気持ちよ過ぎて熱が治まらないのか!?)


中では、側室が一人でいたしているのかもしれないと思うと、興奮し部屋の中の音を拾おうと聞き耳を立ててしまっていた。


しかし、よくよく聞くと苦しそうな呻き声にも聞こえ、扉を見ながら中の様子を窺おうとしてしまう。


仮に身体が痛くて呻いているのだったら、少しでも楽になるなら助けてやりたいが、もし一人で慰めている最中でもあったらと思うと、不用意に扉をノックすることもできない。


結果、あまり度胸のないライトのとった行動と言えば、ちらちらと扉を見ながら悶々と悩むことだった。


彼が悩み出し暫くして、慌ただしい足音が近づいてきた。


ライトはハッと意識をそちらに向けると、ジークともう一人の男が駆け寄ってくるのが見えた。


ライトはホッと息を吐くと、ジークに目配せをし頷くと、扉をノックした。


(やっとこのもやもやから開放される!)


一人で慰めているにしろ苦しんでいたにしろ、漸く声がかけられると一安心するライト。


中からそっと顔を覗かせた側室は、僅かに頬が上気しており、ライトは結局どっちだったんだ!?と、冷静さを装いながら再び悶々とした気持ちに陥ってしまう。


側室と護衛の会話はお互いを思いやり、微笑ましい限りなのだが、ライトはそれよりも己の疑問の方が気になり仕方がない。


この気持ちを分かち合えそうなジーク見やれば、何やら一人満足気に微笑んでいる。


舌打ちしたい気持ちを押し殺していると、側室と護衛の会話から有意義に過ごせたという言葉が聞こえ、どう過ごしたんだっ!?と突っ込みたくなる。


しかしその後、側室から丁寧な礼を述べられ、ライトはまたも自分自身に羞恥を感じてしまうのだった。


「どうぞ、お体にお気をつけて」


ジークと揃って同じ言葉をかけたライトは、心の中で、変な事ばかり考えてすみませんと謝った。


側室と護衛が去っていく後ろ姿を見守っていると、急に立ち止まり、側室が護衛に何かを訴えている。


やはり、具合が悪かったのかと、思わず一歩踏み出したライトの耳に意外な言葉が飛び込んできた。


ーストレッチもしてたし。


(ストレッチ…。あぁ、ストレッチね)


ライトは自分があんなに悩んでいたのが馬鹿らしくなり、遠くを見る事しかできなかった。


ちなみにジークといえば、その言葉に呆然としながら、あの側室は普通なのか?という疑問が膨れあがっていた。


その後、皇帝が私室を訪れるまで、ライトは己の恥ずかしい妄想に身悶えしそうになるのを堪え、ジークは一般的な普通の女性の定義をいろいろと考えさせられていたー。



☆お知らせ☆


ようこそ、マールをあわせてお読みの皆様へ。


活動報告にて、皇帝対決と題しまして、少し遊んで見ました( ´ ▽ ` )ノ

興味があれば、ご覧下さい☆

ヤマナシオチナシでございますorz

ちなみに、ヒロイン入れ替えも考えたのですが、マールの方には死亡フラグしか立たず、ヤヤの方は会話が続かないという結果に至り、断念いたしました(T ^ T)

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