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life over life -僕は死ぬたびに強くなる-  作者: 柊梨/しゅうり
第1章 鏡は遷らない
9/11

1p-9 : 少女は共謀する

「あぶない――!」


 そう聞こえてきたときには、誰かに押し倒されていた。


 次の瞬間、男が放ったナニカが炸裂した。


 手榴弾のようなものだった。

 ピチャ、と生暖かい鉄の匂いが庇いきれなかった手先に掛かる。


「だだだ大丈夫ですか!?」


 その声に懐かしさを覚えた。というか、つい先日聞いた気がする。


 ぱちくり、と目を開けると、


「………ん、愛夢、のお母さん………?」


「あっ、ホントだぁ。ごめんね、痛かったよね?」


 そこには金曜日に出会った、愛夢と共謀するタッグの一人の女性がいた。

 愛夢とは違う体の感触である。


 と、そんなことは置いといて。

 顔をゆっくりと彼女の首と肩の間から上げると、そこには死屍累々が広がっていた。

 さっきまで俺のことをきつく言及していた女性は額に金属片が突き刺さり、ただこの場をぼーっと見ていた手前の男性陣は軒並み倒れるか、机に突っ伏して血液を垂れ流している。


「あっ、見ない方がいいかも……」


 遅いよ。


 今更ながらに目を彼女の手で覆われる。

 すると、気が付かなかった体の震えが、胸あたりの筋肉から次第に全身に伝播していくのが感じ取れた。

 余計な贅肉が余計なほど震える。


「あちゃー。こりゃ、派手にやらかしたねー」


 ゴトッと大きな机の破片を持ち上げる音がする。

 彼女はまるで日常茶飯時のように平然と対処する。

 改修業者という設定はもういいのだろうか。


 それとも、俺が彼女らの正体を知っているとでも言うのだろうか?


「とりあえず、君はドアの外で待っててくれる?」


「あ、はい」


 目を隠されたまま、相談室からぽてっ、と投げ出された。





「もうちょっと丁寧にしてくれたっていいじゃないか……」


 不満を小さく声に出しながら、ドアに耳を立てて何をしているか想像をする。


「(あーあー、ほんとに何してんのよ。自作手榴弾も作るようになるなんて世も末ねー)」


 そんな声が聞こえてきた。

 自作手榴弾ってなんだよ、怖すぎだろ。


「……うっと」


「あっごめーん。ちょっとグロすぎたよね」


 寄りかかってたところを突然扉を開けられて、重心を崩す。それを彼女の足で受け止められた。


 そして、素早くドアを閉めた。


「……あのさ、大丈夫?」


「は、はい」


「お姉さんがお口直し、してあげよっか?」


 パッと両手を広げて屈みこんで、いかにも『抱き着いておいでー』と言っているような体勢になる。


「………だっ、大丈夫です」


「あっそう……」


 シュン、と肩を落として落胆する。



 しばらくの沈黙の後、彼女が言った。


「じゃあさ、ちょっと気分晴らしにちょっとお話しない?」


 何を言っているのだ。

 今は自習とは言えど、自由に歩き回っていい理由になるわけがない。


 それに……


「お姉さんの背中に血がいっぱいついてますよ」


「はぇ!? ウソ?!」


 今日初めての絶叫を聞いた。







「お母さん、なにしてるの」


 俺がみゆに学校の空教室に連れてこられておよそ40分ほど。どこからか嗅ぎつけた愛夢が訪ねてきていた。


 自称母親の方はにこやかに話を進めるが、俺にはちょっとやそっとじゃ埋まらない精神的な傷が出来ていた。


 透明な脳漿(のうしょう)が女性教師の額にささった金属片から流れ出す画が、

 顎が原型をとどめずに、引きちぎられたようにそばに転がっていた風景が、

 脳内の血液に混じったようにぐるぐる循環していた。


「……おぇ」


 思わず、気持ち悪くなり、口を押さえる。


 そういえば、手榴弾で爆音を奏でたのにも関わらず、誰一人として見物しに来ようとしないのはこの学校の風土的なものがあるのだろうか。


「なにしてるのって、愛夢ちゃんのお友達とお話してただけよ?」


 流石は歴が違う。あの状況から普通で居られるとは。


 お話と言っても、ただひたすらに、こちらの持ってる情報を引きずり出そうとして来ただけだが。

 もちろんうまい具合に躱したし、特にヘマはしていないはずだ。


「ふーん、何話したの?」


 みゆを威嚇するように睨みながらこちらに歩いてきた。


「それは、ねぇ? 二人だけの秘密よ?」


 こちらをちらっといたずらげに見たあと、


「愛夢ちゃんだってぇ、なんか秘密、あるんじゃないの~?」


「っっっ! ばばばバカ! 違うけどっ?!」



 …………。


 八百長にしか見えないのは、俺だけだろうか。

 死体を見た後のラブコメは傷に塩を塗り込むようなものだぞ。


 そこら辺理解してる?


 とは言え、ラノベとかアニメによくある展開を見させられているわけだが、これがもし愛夢たちの関係を理解していなければ、完璧に騙されていたかもしれない。


 それほどに上手くできた観劇だった。



ーーーー



「じゃあ、またね、康太君。心が鬱になりそうだったらいつでも連絡してねー」


「あ、はーい」


 改修業者と偽ったのは忘れた、と言わんばかりにみゆは、母親面して堂々と校門から出て行った。


「……ハァ。これだと気が滅入りそうだ」


 みゆさんが瞬間的に守ってくれたからよかったが、あの時に感じた冷や汗は異常なほどに冷たかった。

 内臓が破裂する感覚もした。地雷を踏んでしまった兵士と同じ感覚をした気がする。


「………くれたら……のに」


 ぼそぼそとつぶやく声が聞こえれば、愛夢がこちらを怖くない程度に睨んでいた。

 その顔でなぜか安心できてしまう自分がいた。


「……なんだって?」


「だから! 私に言ってくれればよかったのに!」


「なにが?」


 目尻を涙で溜まらせて、口元をきゅっと締めて、


「怖い思いしたのなら、まず私に頼ってよ! 親友でしょ?」


 いや、頼る前に死んでたかもしれないですやん。目の前で爆発したんだよ、言えるわけないじゃん。


 俺の下手に手入れのできていない二の腕をがしっと掴み、むすー、と不満の声を俺の胸の中でつぶやく。


「びっくりしたよぉ……初めての、友達だったのに………」


 なんか論点がズレている気がしないでもないが……。

 ひとしきり叫んだあと、彼女は母(自称)が去った方を見つめ、



「……やっぱり、離婚してからどうも男を漁ってる気がするのよね」


「………」


 ムードが台無しだ。

 その意を込めてジト目で冷たく返す。


 「てへっ」と舌を出して頭を掻く。


 カチャ、と金属のような音が鳴る。


「――っ」


 その音が愛夢の口を瞬間歪ませたのを俺は見逃さなかった。


「――ねぇ、」


 反射的に俺は反応せざるを得なかった。

 瞬間的に伸びたその手は愛夢の手首を正確に捉えた。



「これ、なに?」



 そこにはさっき自爆した男性が持っていた真鍮色のなにかだった。

ようやく折り返し地点ぐらい(かな?)まで来ました!

ここまで読んでくださって、ありがとうございます!

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