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life over life -僕は死ぬたびに強くなる-  作者: 柊梨/しゅうり
第1章 鏡は遷らない
7/11

1p-7 : いたはずの少女

「――で、白状する気になった?」


「なるわけないじゃないですか」


「なんだと!?」


 俺は、昨日とは全く違う長細い会議卓の置かれたせまっこい部屋に連行されていた。

 そして、その中に10名以上が詰め込んでおり、即席の弾劾裁判と化していた。


「第一ね、やってないことをやったと決めつけるのは、良くないと思うんすよ」


「だから証拠が上がってるでしょ?! あなたはやったの!」 


 俺は坂東君の名誉を守るためにも『やっていない』の一点張りで戦っていこうと心に決めた。

 それより、この不名誉な立ち位置を何とかしてほしい。ここには激詰めする大人しかいないのか。


 すると、俺から見て正面のおじさんが、よそよそと手を挙げて、


「じゃ、じゃあ……君は誰が盗ったと思う?」


「知るわけないじゃないですか、俺の友人関係考えてみてくださいよ」


「………」


 破壊力のある返しに一同は静まり返った。

 ある人はこちらを睨み、別の人は資料をしらみつぶしに詮索していた。


 すると、昨日の女性教師が立ち上がって、


「でも、あんたがやったっていう証言はいくつも挙がってるのよ? これについてはどう言い訳するつもり?」


「たとえば?」


「たとえ……! ……そんなの関係ないわ!。とにかく、あんたが犯人なの!」


「いやいや、具体例も出さずにホラ吹いているかもしれないのに、信じられるわけないじゃないですか」


 そもそも物理的に、彼が盗み出すことは可能なのだろうか?

 俺が見せられた映像は何年何組かは伏せられていた。そして偶然なことに、俺と似た体形の男子生徒は5人程もいた。

 暗がりで、体形も同じで、クラスも分かっていないのになぜ俺と断定できたのだろうか。




「一番君のせいで迷惑を被っているのは、被害者ではないかな、坂東君?」


「ぐ……」


 痛いところを突かれた。


 心の片隅に考えていた、最悪のケース

 被害届でも出そうものなら、警察が即動いて、その流れでパクられるってのも否定できない。


「由奈さんは君が犯人だとずっと思っているようだよ? もし本当に、自分はやっていないというのならまず彼女に謝るべきではないかな……?」


 由奈陽菜。水着に書いてあった名前だ。

 自室に飾られていた学級写真でその姿を見た。あんまり可愛くなかった気がする。



「それはまあ、するべきだとは思っていますが……今は関係ないでしょう」


「関係ない!? そんなわけあるか、彼女は一生モノの傷を負ったに等しいんだぞ……!?」


 大人ご自慢の論点ずらしね。

 たくさんやられてきたからもう対処法は分かり切ってるんだ。


「すいません、その由奈陽菜、さん……でしたか? その人と僕は話したことすらないんですけど……」


 必殺カマ掛けだ。

 俺が転移する以前は知ったこっちゃないが、この土日に俺は、徹底的に搾り取れるだけの範囲の交友関係を限られた彼の部屋で調査した。

 それによると、確かに由奈、という人物は彼の視野には入っていたものの、偏執気質な感情は抱いていなかった。

 なぜそれが分かるのかというと、彼が遺したプリントの山にクラス写真が混じっていたのだが、彼の好みであろう女子生徒にはハートマークが付いていたからだ。そしておよそ60あったハートマークのうち、彼女だけは綺麗に除外されていた。


 彼らが由奈が被害者だと言うのなら、こっちは無関係だと言いたい。

 無関係を指摘された教師陣は全く固まって、視線を錯誤させていた。


「で、でも……証言があるんだ」


「だから、誰がなんて言ったか教えてくださいって言ってるんです」


 再び訪れる沈黙。

 ここまでくればもう分かったも同然だろう。



 ――これは華麗な冤罪だ。



 何者かが俺を貶めたい一心で、でっち上げでもしたのだろう。

 それが水着泥棒と言う結構ヤバいレッテル張りに執着した。

 これを発案したやつはバカだと言いたい。

 貶めるならいくらでも方法はあるだろう。

 なにも、被害者が出る方法を使わなくてもいいのに……。


「証言のひとつも言えないようじゃ、この事件に俺が関わっていたことなんて立証できませんよ。

 映像は今の時代、いくらでも改竄できるんですから」


「くッ………」


 大の大人を言い負かせたことに俺は一つの快感を得ていると、一人の男が何やらポケットをごそごそ探り、金属片を取り出した。


「もういい……! バカだから簡単に責任を擦り付けられると思ったのに、なんだよこのザマは!

 まるで晒されてるみたいじゃないかっ!」


 うん、そうだよ。


「お、おい君、なにしてるんだ……!?」


 取り出した金属片は二つに割れ、その空いた中身に真鍮色の何かを取り付けた。


「見ればわかるじゃないですか、即席の殺傷器ですよ」


 その金属片を片手で持ち、もう片方で胸ポケットからライターを取り出し、着火した。


 って、それを俺に投げつけるつもりか――?!





「あっ、失礼しまーす。私、改修業者のものですけど、ちょっとご挨拶しに――何してんすか?!」


「あ?」


 飛び出してきたのは女性だった。

 そして、どこかで見たことのある面影の女性だ。


 だが、気付いた時にはもう既に、よく分からない殺傷武器は彼の手を離れていた。

 シュボボボと景気のいい導火線に火が付く音がすぐそばに迫っていた。


「あぶない――!」







「――やあ、よく来てくれたね。かなり遠かったんじゃないのかな?」


「いえ、今は空中モノレールが発達していますから、たかだか20分くらいですよ」


「そうかそうか。しかしすまないが、本当に小柄だね?」


「仕方ありませんよ、遺伝ですもの」


「はっはっはっ、確かにそうだね。最近は潜性も突然変異するような時代だしね」



 ――ここはこの国の心臓街だ。

 主な首都機能が集中し、2度の首都直下地震を粘り強く耐え抜いた鉄壁の街。

 国内の経済活動の過半がここで行われる、一大経済圏だ。


 そんな東京に、私――有楽愛夢は現在教師と喧嘩中の坂東君を置いて、単身で赴いていた。

 目的は危険者特例法上の最重要危険人物についての報告をするためだ。



「しっかし、困ったな。誤射したやつが生きているなんて……」


「今何か言ったかね?」


「あ、いえ。いくら逮捕しても感染者は増加の一途を辿っているな、と」


「確かに、この速さはちょっと不気味だ」


 そうこう話しているうちに、開かれた広場に到着する。


「――さあついた。ここが官邸だ。閣僚たちは待たせているから、すぐに向かおう。着いてきなさい」


 今更ながらドレスコードとか大丈夫かな、と思う愛夢だった。

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