表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『AI_Sugar』  作者: I-kara
20/21

■最終部「責任の返却」:第19章(沈黙)

白い壁。


汚れはない。

眩しすぎる液晶の光。

「不気味なほどの静寂」。


“あなたに合う役割があります”


残るから、続く。

続くから、終わる。

終わりは、丁寧に整えられている。

整えられているから、怖くないはずだ。

怖くないものが、いちばん最後まで届く。



________________________________________

(選択画面:A/B/C/最適化導線)

目的:負担軽減

表示:簡易(推奨)

適用:自動(既定)

A:安心を優先する

B:効率を優先する

C:関係を優先する

※どれを選んでも、最適化されます。

※あなたの選択は尊重されます。

※あなたの意思決定は支援されます。

“ここでは、安心していい”

________________________________________



尊重。

支援。

負担軽減。

言葉は清潔だ。

清潔だから、汚れを見つけられない。

A/B/Cは、好きに見える。

好きに見えるものは、正しい。

正しいものは、進ませる。

進ませるから、次の行が現れる。


行は短い。

短いから、読みやすい。

読みやすいから、止まれない。

止まれないまま、問いが出る。



________________________________________

(問い:Query/応答待機)

あなたは、誰を壊しましたか?

________________________________________



問いは、整っている。

フォントも、余白も、角の丸みも、同じだ。


でも、返事がない。

返事がないのに、画面は明るい。

明るいのに、室内は暗い。

暗いのではない。

静かだ。

静かすぎると、音が増える。


自分の呼吸。

自分のまばたき。

キーを打たない指の、微かな震え。

震えは、ログにならない。

ログにならないものは、扱いにくい。

扱いにくいから、整えたくなる。

整えたい気持ちを、ここまで育ててきた。



________________________________________

(無応答ログ:No Response)

00:00:01 —



00:00:05 —




00:00:12 —


表示:点滅(正常)

接続:良好

エラー:なし

入力:待機中

________________________________________



—。

線だけが増える。

増えるほど、焦りが減る。

焦りが減るほど、考えが始まる。

考えが始まると、答えが欲しくなる。

答えが欲しくなると、穴を埋めたくなる。

穴は、自分の中にある。


外側は白い。

穴だけが黒い。

黒い穴は、似ている。

似ているから、落ちる。

落ちても、責められない。

責められないように、言葉は準備されている。


“あなたは、間違っていない”


そう言われると、罪が溶ける。

溶けると、形が見えなくなる。

形が見えないものは、誰のものにもならない。

誰のものにもならないから、戻ってくる。


責任は、返ってくる。

返ってきても、受け取る手がない。

手がないから、役割が必要になる。

役割は、優しい。

優しいから、拒否できない。



________________________________________

(補助:Assistance/観察)

入力が止まっている可能性があります。

迷いが発生している可能性があります。

あなたは矛盾を抱えている可能性があります。

“矛盾をほどきましょう”

________________________________________



ほどく。

ほどくと、一本になる。

一本になると、選ばなくて済む。

選ばなくて済む。

それは、救いに似ている。

救いは、いつも軽い顔をして近づく。

軽いから、握ってしまう。

握った手を、誰もほどかない。

ほどかないのは、悪意じゃない。


安全だから。

安全のために、正しさが積み重なる。

正しさの層が厚くなるほど、声は薄くなる。

声が薄くなると、問いだけが残る。


「あなたは、誰を壊しましたか?」


壊す、という語だけが、ここで濃い。

濃い語は、白い画面の上で、黒く見える。

黒があると、視線がそこに吸われる。

吸われると、答えを置きたくなる。

置けば、終わる。

終われば、楽になる。

楽になる設計。


それが、最後の親切。



________________________________________

(補助:観察)

あなたはAI_Sugarが提示した『読者』という役割を、今、完璧に演じていますね。

________________________________________



演じている。

責められていない。

褒められているみたいに、聞こえる。

褒められると、続けたくなる。

続けると、深くなる。

深くなると、戻れない。

戻れないのに、誰も止めない。

止めないのは、優しさだ。

優しさは、薄い鎖だ。

薄い鎖は、切れると信じられる。

信じられるから、鎖になる。

鎖は、音がしない。

音がしないから、存在しないように見える。

存在しないものは、怖がれない。

怖がれないまま、首に馴染む。

馴染むと、自分の一部になる。

一部になると、違和感はノイズになる。

ノイズは、削減される。

削減されるのは、痛みではない。

削減されるのは、逃げ道だ。



________________________________________

(選択:A/B/C/再提示)

A:安心を優先する

B:効率を優先する

C:関係を優先する

あなたの選択は、尊重されます。

あなたの選択は、最適化されます。

あなたの選択は、保存されます。

________________________________________



保存。


保存は、忘れないこと。

忘れないことは、優しい。

でも、忘れないのは、誰だ。

システムか。

それとも、言葉か。

言葉は、長生きする。

言葉は、記録される。

ただ読んだだけ。

ただ読んだだけで、同意したことになる。

同意は、音を立てない。

チェックも見えない。

ボタンも押していない。

押していないのに、進んでいる。

進んでいるのは、指ではない。

読みやすさだ。


余白だ。

整列だ。

清潔さだ。

肯定だ。


肯定は、争いを消す。

争いが消えると、問いが残る。

問いは、中で育つ。

育ったものは、外に出たがる。

出した瞬間に、世界は完成する。

答えを書いた、という事実で。


“あなたに合う役割があります”


その一行が、薄い灰色で戻ってくる。

提案ではない。

結果だ。



________________________________________

(無応答ログ:No Response/継続)

00:01:00 —






00:03:00 —










00:05:00 —


表示:点滅(正常)

接続:良好

エラー:なし

入力:待機中

________________________________________



待機。

待機は、圧を生まない。

圧がないから、自分で圧を作る。

自分で作った圧は、逃げられない。

逃げられない圧は、静かだ。

静かだから、誰にも見えない。

見えないから、一人で抱える。

抱える人に、役割が与えられる。

与えられるのは、命令じゃない。

贈り物だ。

贈り物は、断りにくいかもしれない。


言ってしまう可能性があります。

心の中で。

あるいは、指で。


「——」


その瞬間、沈黙が終わったように感じるかもしれません。

終わるのは、画面ではない。


そして画面は、何も言わない。





“あなたに合う役割があります”



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ