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「まったく、あなたって子は」
「あはは。さってと、そろそろ帰ろうかな。リアをあんまり待たせるわけにもいかないし」
紅耶はんっと背伸びをしてから、姉と向かい合っていた身体を横に向けた。帰ることを聞いて、翠も椅子から立ち上がる。
「今度、シリス会長や蒼瀬さんと一緒にゆっくり食事でもしましょう。私が学園に行くから」
「翠姉、正式な場じゃないんだから、そんな呼び方しなくてもいいよ」
「あっと、そうね。じゃあ……シリスちゃんとリアちゃんにもよろしく伝えておいて。私もゆっくりお話したいから」
「りょーかい。言っておくよ」
「あと……」
翠は、優しく微笑んでから口を開いた。
「たまには紅耶もこっちに帰ってきてね。みんな喜ぶと思うし……私も嬉しいから」
「あの子たちなら大丈夫だよ、いずれ絶対会わなきゃならなくなると思うから。でも、ありがと」
翠の微笑みに応えるように、紅耶も微笑んだ。
翠の言った『みんな』というのは家族のことではないだろう。両親や兄は、今の紅耶のことをあまり良くは思っていないはずだった。では、翠のいう『みんな』とは誰かというと、紅耶の友達のことだった。いや、友達というより仲間というほうが正確かもしれないが。
そんな仲間のことを一瞬だけ思い浮かべてから、紅耶は苦笑した。よく考えてみれば思いふけるほど昔でもないし、心配するほどのことでもない。自分で言ったとおり、みんななら大丈夫だろう。
「よし、それじゃあ、またね翠姉」
紅耶は軽く気合をいれると、ドアを方へと身体を向けながら翠に軽く手を振った。
「うん、また」
翠も簡単に挨拶を返し、軽く手を振った。
本当はもう少し話をしたかったのだが、今は特別魔法対策課の場であって姉妹の場ではない。見送りをしないのもそのためだった。
紅耶もそのことは分かっている。なので、部屋に出る前にもう一度だけ姉に向かって微笑むと、そのまま部屋を出て行った。




