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(しかも――)
紅耶は、考えを巡らせながらまた別の報告書を手に取った。そこには、リアが誘拐され紅耶とシリスが助け出すまでの経緯が記されてあったのだが、こちらに銃を向けてきた黒スーツの男達の記述は一切なかった。もちろん、調べが不十分だったわけでも、翠が隠したわけでもない。捜査員が書かなかったのだ。
一枚岩ではなく捜査が進まないといったのは、つまりはそういう事だった。裏で蒼瀬源二の研究に協力し、力を貸している人間が特魔の中にいる。
(いや……もっと上が絡んでいるかもしれない)
自分にシリスの暗殺を命令してきた男が頭に浮かぶ。名前を覚えたくなかったので調べなかったが、こんなことなら早めに調べたほうがいいかもしれない。組織に関わりたくはないが、後手に回ると後が面倒になる。今回のことがあった以上、変にちょっかいを出してくる前に――
「紅耶」
姉の声に思考を止め顔を上げると、翠が真剣な眼差しで見つめてきた。
「いくら研修生でも……いえ、研修生だからこそ、今回のことは問題になるかもしれない。下手をすれば、研修生も辞めさせられることも……」
「今更だよ。生徒会に入って派手に動いている時点で、いくらなんでも上層部も気付いてるよ。わたしが『どの位置に立つことにしたのか』なんて」
紅耶はなんでもないように笑って、付け加えた。
「まあ、嫌われるのは慣れてるからね。でも、お父さんやお兄ちゃんはいいとして、翠姉に迷惑かけるのは悪いかなぁって思ってる」
「悪いと思うのなら、少しは大人しくしてて」
「わたしも大人しく過ごしたいんだけどね。でも、ごめん。きっと無理だよ」
持っていた書類を机に置いてから、紅耶は不敵ににっと笑った。
「これが、わたしの性分だから」
その言葉に、翠はまた溜息をついた。




