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研修生と化物の女王  作者: shio
エピローグ
97/104


 意味がない――そう、全ては遅く、最早何の意味もなかった。

 紅耶は、読んでいた捜査報告書を机に戻し、散らばっている別の一枚を手に取った。

 リアが生まれたとき、母子ともに魔法検査が行われリアもリアの母親も魔法使いであることは分かっていた。

 それを知ったときの蒼瀬源二の感情はどうだっただろう。それは、それこそ本人に聞かないと分からないことだが、結果として最悪の方向へと向いてしまった。

 蒼瀬源二は、妻と娘が魔法使いだということを世間に隠し自身の研究材料にした。

 研究の命題は魔法以上の力を人工的に創ること。何故、魔法嫌いの蒼瀬源二がそんな研究を違法にしていたのかは想像できる。彼は科学を信奉するあまりに、魔法に恐怖を持っていた。

『魔法がある』と認めてしまえばそれだけのものなのに、認めてしまえば今まで信じてきたものが全て否定されたような気がして、自分の思想が壊れる事を極度に恐れた。

 そして、恐怖に憑り付かれ、科学が一番だと証明する為に魔法以上の力を人工的に創り、力で魔法使いを否定しようと考えてしまった。

 その結果、リアの母親は実験途中に亡くなってしまう。

 だが、蒼瀬源二は妻を病死という事にし、リアを代わりの実験体にして研究を続けていった。

 研究の結果、実際に紅耶が体験したようにリアは強大な魔法の力を手に入れた。だが、そんな研究が長続きするはずがなく警察に目を付けられ、捜査の目を誤魔化す為に実験の何よりの証拠であるリアを古城学園へと転入させた。

 その後のことは、調べる必要もなかった。転入からの出来事は、紅耶がすべて知っている。


「ごめんね……蒼瀬源二に違法研究の疑いが出た時点で、もっと強引に調べるべきだった」


 姉の言葉に、紅耶は報告書を机に戻すと首を振った。


「翠姉のせいじゃないよ。容疑がでた時の担当は翠姉じゃなかったし、もし担当だったとしても……」


 紅耶はそこで言葉を止めた。止めた理由は、口に出さなくても翠なら分かってくれるだろうと思ったのと、言葉の途中で言うのに嫌気がさしたからだった。

 もし担当だったとしても捜査は進まなかっただろう。いや、正確には『進まないようにされた』。

 特別魔法対策課は一枚岩ではない、これは内部のことを深く知っている人間ならば誰もが気付いていることだった。ただ、暗黙の了解として誰もいう事はない。

 表向きの名目としては魔法使いの保護を謳っていても、そもそもの特魔の創設理由が魔法犯罪の取り締まりだったため魔法使いを嫌悪している人間がほとんどだった。保護といいつつ、管理し支配しようと考えている人間が特魔を形成していた。

 さらに、その支配という目的の中でも、魔法使いを上手く利用しようとする人間と魔法使いを根絶しようとする人間がいた。翠のように本当に魔法使いの保護を目指している人間は極少数だった。

 反魔法派の蒼瀬源二の捜査が進まないといったのはそういう理由からだ。


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