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研修生と化物の女王  作者: shio
第四章 たった一つの気持ち
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18


「…………それでも」


 紅耶の胸に顔を埋め、リアは小さく、それでもはっきりと囁いた。


「それでも……パパだから」


 紅耶は優しく強くリアの全てを受け止め抱きしめる。

 リアは、紅耶の胸に顔を埋めながら続けて口を開いた。震える声で、祈るように願うように……。


「パパのこと好きだから……」


 それは、別れの言葉。心の中でずっとずっと叫んでいた言葉だったのに、初めて口にだして父に伝えた言葉は、別れの最後の言葉だった。


「リア……」


 胸の中のリアを強く強く抱きしめる。

 殺人の衝動に逃げるつもりはない。だが、もし、リアが「もういい」と一言いったのなら、信じることをやめるのなら――それが、正しくなくとも紅耶は蒼瀬源二を殺すつもりでいた。怒りという問題ではない。許してはならない、絶対にしてはいけないことに対しての行動と選択。もし、許されざる者を消すという選択を選ぶのであれば、紅耶は一人ここに残り殺人の責を負うつもりでいた。

 それでも、リアは父が好きだといった。震えながら泣きながら好きだといった。

 殺されそうになっても、父だからといった。


 ――この強さと優しさに、わたしも応えよう。


 紅耶は顔を上げると蒼瀬源二に視線を向けた。


「リアはパパの事が好きだといった」

「…………」


 蒼瀬源二はなにもいえない。目を見開き、ただ震えている。

 何かを求めたわけじゃない。何かを言ってくれることに期待したわけじゃない。


「あなたの事を好きだといった」


 ただ伝える。親が好きだという子供の気持ちを、好きだというただそれだけの気持ちを伝える。


「…………」


 蒼瀬源二は呆けたようにこちらを見ているだけだった。

 ――それで終わりだった。


 ヒュオ――


 紅耶は、リアを強く抱きしめたまま、右腕を横に振りぬいた。

 縄の先の鉛が飛んでいき、蒼瀬の鳩尾に突き刺さる。


「――――」


 そして、何の言葉も発しないまま蒼瀬源二はその場に倒れた。


「――なんで、わかんないのよ」


 紅耶の呟きと父の姿を見て、リアは大声を上げて泣いた。

 紅耶の服が破けるほどぎゅっと握り、今までの全てをぶつけるようにずっとずっと大声で泣いた。


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