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それは、絶対にやってはいけないことだ。絶対に、なにがあっても。
親が子供を殺そうとするなど、絶対にしてはいけない。例え、脅しであっても絶対にやってはいけない。
常識や人道などという問題ではない。人が人として生きることが当たり前のように、それは人間が本来持つ自然で当たり前のことだった。
それをした。
リアの心には一生拭えない『何か』が刻まれた。
研究材料として使われたとしても、まだリアは父を信じていた。
研究の末、自分が死んでも構わないと思われていても、それでもリアは父がいつか変わってくれると信じていた。
人間じゃない。子供じゃないといわれても、父と呼んだ。
それを裏切った。最後の最後の一線を裏切った。
自分の保身のために子供へと銃をつきつけた。
自分の正当性を示すために娘を殺そうとしている。
悲しみでも、絶望でもない。
絶望という言葉すら生ぬるい。
「――――」
紅耶とシリスは、ただ見つめていた。
同情でも、悲しみでもない。怒りというだけでは生ぬるい。
「こ、殺す――!」
蒼瀬源二が何かを口走ろうとした瞬間。
――ヒュオッ!
「あぐっ!!??」
ガチッという無機質な音が響き、紅耶の放った縄の鉛は蒼瀬の銃を弾き飛ばした。
「ぁ、ぐ……っ!?」
呻きながら落ちた銃に顔を向け、次に紅耶に視線を向けたとき――今度は蒼瀬源二が息を止めた。
「――――」
紅耶とシリスの瞳――それに射すくめられ蒼瀬源二は震えながら立ちすくむ。
「リア」
紅耶が静かに一言言うとリアはゆっくり父の横から歩き出し、
「…………」
何も言わずそのまま紅耶に抱きついた。
服をぎゅっと握ってくるリア――悲しみでも、絶望でもない。そんな言葉で現せるようなものではない。
紅耶はリアを抱き寄せた。ぎゅっと抱きしめ、もう一度口を開く。
「リア――私には力がある」
頭のいいリアであれば、それだけで意味が分かるだろう。




