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「お疲れ」
「そっちこそ」
お互いに戦いが終り、倉庫の中央で顔を合わせると紅耶とシリスはにっと笑った。
「さて」
紅耶が一声かけて、そのまま倉庫の奥――蒼瀬源二と助手達がいる方へと二人は身体を向けた。
「ぅ……ぁ……」
井田も合わせた八人の助手は、恐怖に呻きながら身体を震わせていた。魔法使いの力は知っているつもりだったが、まさか銃を持った何十人もの男達をこうも簡単に倒すとは思わなかったのだろう。しかも、もう一人は魔法使いでもなかった。
「これからどうする? リアを返して、警察が来るまで大人しくしてるならよし。そうでなければ――」
「う……うわぁあぁあああっ!!」
紅耶の言葉の途中で、恐怖に耐えられなくなった助手達が一斉にばらばらの方向へ逃げ出した。
「――空駆ける麒麟の嘶きよ――」
バチィ!!
「――――っ!!」
雷光が閃き、逃げ出した八人全員が声も出せずに走った勢いのまま床に倒れこんだ。そのまま、痙攣したように身体を震わせ気を失う。
「そうなるとは思っていたけどね」
魔法の詠唱を終えて、シリスは溜息をつきながら八人全員を見渡した。
「そうね」
シリスと同様に紅耶も溜息をついた。分かっていたことだったとしても、実際に目にすると見苦しさに溜息をつかずにはいられなかった。
ともあれ、これで残すは一人だけとなる。
「さあ――」
残った一人、蒼瀬源二の方へ視線を向け――
「――――」
紅耶とシリスは息を止めた。
「う、動くなっ!!」
蒼瀬源二は銃を手に持ち――リアのこめかみに突きつけた。
「……っ」
リアが目を見開いた。
だが、それは銃をつきつけられた死の恐怖ではなかっただろう。悲しみでもない、絶望という言葉でも生ぬるい。
「――――」
紅耶とシリスは息を止めたまま、黙ってそれを見つめた。




