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「くっ! くそぉお!!」
焦った男たちが銃を撃つ――が、
「――そよぐ風を纏いて、白き衣となす――」
鈴のような声が響き、飛んできた弾丸は宙に浮いたまま止まった。
「わたしのことも忘れないでね」
にこっと微笑むと、シリスはさっと左手を上げて、謳うように言葉を紡いでいった。
「――蒼き雷円は戦場に踊り、麒麟の嘶きは轟く――」
パリッ!!
「――――っ!!」
蒼い雷光が横に走りぬけ、紅耶が倒した反対側の二階の男達が声も出せないまま次々と倒れていった。
紅耶が六人、同じくシリスが六人。二十六人の内、十二人が一瞬にして倒された。残りは十四人。
「撃てっ! 撃てぇっ!!」
一斉に銃声が轟く。だが、紅耶とシリスは動きを止めることなく走りぬけ、左右の男達へと向かっていった。
床に銃弾が弾けるのを聴きながら、まるで踊るように紅耶は身体を回転させて右手を振りぬいた。
――ヒュアッ!!
「がっ!」
風を切り、疾風のように飛んでいく鉛が一階にいた一人のこめかみを打ち抜き、勢いをとめないまま横にいたもう一人の顎も弾け飛ばす。
鈍い音が響き、二人が昏倒するのを見ることもなく、紅耶は縄を引き寄せタンッと軽く飛び上がりながら、もう一度腕を振り抜いた。
「ぐぁっ!!」
額に鉛が当たり、白目を向きながらまた一人倒れる。これでまた三人。
紅耶が相手にしている左側の黒スーツは残り四人だった。一階に二人、二階に二人。
紅耶はふっと息を吐くと、縄を自在に操りながら円を描き舞を舞い続けた。上から狙い撃ちしてくる男のほうを先に倒したいが、二階を狙うには一呼吸分の時間が必要だった。だが、射撃が始まった以上、その時間を作るには先に一階の男達を倒すしかない。
(――いや、先に倒すんじゃなく。倒しながら時間を作る)
瞬間の判断と同時に、身体が自然と動いていた。再び右手を振りぬき、一階にいる黒スーツの一人に鉛を真っ直ぐに飛ばす。
男が避けようと身を引くが、元より男の方を狙ったわけではない。
ガチィッ!!
「っ!?」
男に驚愕が浮かび、金属音と共に銃が弾け飛んだ。その一瞬を見逃さず、ダンッと踏み込み紅耶は男の懐に入る。
同時に銃声が止まった。近接すれば、仲間に当たることを恐れて銃が止まることは分かっていた。
(これで終り)
「ぐがっ……!」
懐に入った男の鳩尾に拳を打ち付ける。ゆっくりと男の身体が倒れていく中、紅耶は鳩尾に打ち込んだ拳を開いて握っていた小石を宙へと上げた。
そして、男が床へと倒れるその刹那、隠れていた紅耶の顔が見えた時にはもう縄が軌跡を描いていた。
パパンッ!!
「――っ!!」
二階に残っていた二人の男が、声を出せないまま額を石に打ちぬかれ倒れていく。
「なっ!?」
そのことに気付き、ただ一人一階に残った男が仲間のほうへと一瞬視線を向けた――だが、それが間違いだった。
再び視線を戻した時には、そこにはもう紅耶はいなかった。そのことを認識して、男の意識は途切れる。
「――戦いの最中に余所見しちゃいけないよ」
紅耶は男の鳩尾に打ち込んだ拳を引くと、ゆっくり倒れるのを見つめながらヒュンッと縄を回し、鉛を右手に戻した。




