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「ついでにいうなら、あなたの言ったことはわたしも関係ないわ」
「なに……?」
「生徒会会則第一条。生徒会は生徒を守り、正常で安全な生活を保障しなければならない」
ざっと紅耶の横に立ちシリスは凛と言い放った。
「あなたは権利がどうとか言いたいのかもしれないけど、権利ならある。リアはもうウチの生徒よ。親だろうがなんだろうが関係ない、ウチで預かった以上、全力で守る」
「紅耶……シリス……!」
シリスの言葉に、リアが涙で濡らした瞳を向けて声をあげた。その声に、紅耶とシリスは微笑を返しながら、それぞれに口を開いた。
「少しだけ待っててリア。一緒に帰ろう」
「みんな学園で待ってるよ」
たまった涙を頬にこぼしながら、リアは小さく――だが力強く頷いた。
それを見て満足そうににっと笑うと、紅耶とシリスの二人は並んでゆっくりと歩き始めた。
「う……ぐ……」
呻くばかりで蒼瀬源二は何もできずにいた。銃を構えた男達も動けずにいる。シリスの立場と力を考えれば、こちらから手を出すわけにはいかなかった。万が一、シリスに何かあれば魔法使い達の力は一気に弾け暴走する。そうすれば、社会が、いや、この国が崩壊する危険も出てくる。
そして、何よりそんな国を崩壊しかねないほどの魔法使い達の力を押さえ込んでいるのが、このたった一人の少女、シリスなのだ。その力を考えれば、迂闊に銃を撃つことなどできない。銃で簡単に殺せるようなら、誰もここまで恐れはしない。銃の引き金が、自らの命を落とすことになりかねないのだ。
かといって、何の抵抗もせずリアを返すわけにもいかない。それでは、銃を構えている意味がない。
紅耶とシリスは静かに歩みを進め、倉庫の中央で立ち止まった。銃を構えた男達全員を見渡し、世間話のように会話を始める。
「まあでも、あちらさんの言う通りわたし一人でやってもいいよ。話がややっこしくならないし」
そう言いながら、紅耶は右腕に巻きつけていたゴム縄を解くと先につけている鉛をぶら下げた。
「冗談、これは魔法使いの問題でもあるのよ。それに、わたしもこのままなにもしないなんて我慢できないわ」
シリスは腰に手を当てて、紅耶に言い募る。
「リアだけじゃない、あの人は魔法使い全員を苦しめた。同じ人間にも関わらず。それにはそれ相応の対応をさせてもらう」
「了解。じゃあ、シリスは右側をお願い。わたしは左側」
「分かった」
「なにをいってる、お前達」
蒼瀬源二の今更な言葉に、この人は本当に科学者なのかと紅耶は頭の隅で疑った。この状況と、この会話で今だ理解できていないのはおそらくこの科学者だけだろう。




