11
「もういい、分かった」
紅耶は静かに息を吸い――そして、顔を上げた。その瞳を朱に染めて、静寂に言葉を響かせる。
「リアはわたしたちと一緒に連れて帰る。あなたは、もう二度とリアに関わるな」
「なにを言っている?」
突然のことに戸惑う蒼瀬に、シリスも静かに口を開いた。
「このままリアを返してくれれば、わたしたちは大人しく帰るっていっているのよ」
シリスの言葉に、紅耶とリア以外の全員に動揺が走る。
この国で最も強い魔法使いが暗にこういっているのだ、『リアを返さなければ、実力で取り返す』と。
井田を含め、助手であろう科学者たちが息を飲み後ろへと下がり始める。そんな中、一人だけ一歩も引かなかった蒼瀬源二はこちらを睨みつけ、脅すように呟いた。
「いいのか。魔法使いが、しかも、生徒会長であるお前が一般の人間を傷つけても。学園の失墜だけじゃない、魔法使い全体の問題になるぞ」
自分が優位にあることを疑わず蒼瀬源二はシリスにそう告げ、続けて紅耶にも脅しをかける。
「そして、お前もだ。研修生であるお前が魔法使いに味方するのか? お前は俺達と同じ『仲間』だろう。研修生を辞めるだけの問題ではない。どこにも居られなくなるぞ」
全てを話す前に蒼瀬源二は笑みを浮かべていた。この期に及んで、まだ『自分の正当性』を訴えて脅してくるのはどう考えても滑稽なことだったが、シリスも紅耶も気にしないことにした。それこそ、この期に及んでなにかを言ったところで無駄だろう。
「関係ない。というか、同類にしないでくれる。何の仲間よそれ? 魔法使いじゃないってこと? あなたが魔法使いじゃない人間の全てを代弁してるみたいに言わないでよ」
「なんだと……?」
めんどくさそうに吐き捨てる紅耶に、蒼瀬源二は意味が分からないように呟いた。
分からないだろう、紅耶は胸中でそう呟いた。分からないはずだった。だから、こんな間抜けな脅しをかけてきた。
「わたしはリアの味方よ。この意味が分かる? リアが魔法使いでも魔法使いじゃなくても、わたしはリアの味方なの」
「そうね。そして、紅耶は魔法使いじゃないけどわたしの仲間よ」
紅耶の言葉の後にシリスは一歩踏み出し、同じように一言のもとに蒼瀬の脅しを切って捨てた。




