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(それとも……)
胸中で呟く。
(話す価値もない内容だと思っているのか)
ぐっと拳を握り締める。そう考えているのならば、尚更話さなければならない。
「実験対象であるリアを古城学園に転入させた思惑は二つ。一つは違法な研究の疑いがかかった為、研究の実験体であるリアを学園に転入させ捜査の目を誤魔化すこと。もう一つは、学園に転入したリアを『自分の娘だと分からせた上』で誘拐し、誘拐を魔法使いの犯行にしたてあげ、魔法使いへの危険性を訴え自らは被害者となること」
そこまで一気に話し、
「リアが自分の娘だということを学園に流したのも、あなたでしょ」
最後にそう言って、紅耶は一度言葉を止めた。
「…………」
蒼瀬源二は黙ったままだ。ここまで話しても、否定も肯定もない。
もう一度だけ、リアに視線を向ける。リアは立ったままじっとこちらを見つめてきていた。
リアの視線を受け、ぐっと奥歯を噛み締める。そして、再び蒼瀬源二へと視線を戻した。
「問題は、誘拐した後のあなたの考えだ。誘拐を自分で助けたことを公表し、さっき話したように魔法使いへの批判の口実とするか……もしくは、誘拐したまま一生リアを表に出さず実験の材料として使うか。もし、それでリアが死んだとしても、自分は被害者でいられるし、魔法使いの弾圧をしても誰も不思議に思わない。それはそうだ、学園で誘拐が起こった以上、あなたの立場を考えれば魔法使いがリアを誘拐して殺したと思われるほうが自然だから」
リアが悲しそうに目を伏せた。だが、それは自分が死ぬ事を話された悲しみではない。
賢いこの少女は、父が紅耶の言った通りの事を考えることに全て気付いていた。しかし、自分に対する父の感情が悲しかったわけでもなかった。
父が悪く思われることが悲しかった……母が愛した父が憎まれることが悲しかった。
「ねえ、一つ聞きたいんだけど」
紅耶は、なおも言葉を続ける。
「蒼瀬博士、あなたはなにを求めていたの?」
「…………」
聞かれても蒼瀬源二はまだ黙っていた。もしかしたら、話など聞かずにこの後どうするかを必死に考えているのかもしれない。
周りの人間も、一言も言わずに紅耶の話を聞き続けていた。ただ、周りの人間に関しては生徒会長であるシリスがいる以上下手に手を出すことができず、話を聞かざるを得ないといったところだろうが。




