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ちなみに、シリスも紅耶も市役所と警備隊の中を通って外に出たわけではなかった。もし市役所を通れば、すぐに蒼瀬源二へと報告されていただろう。そうなれば、リアを助け出すことは難しくなる。
なので、別の方法にすることにした。魔法都市の外に出ようと思うなら方法はいくらでもある。もちろん、シリスと紅耶だからできることなのだが。
「…………」
蒼瀬は歯を食いしばらせながら二人の少女を睨み続けるだけで、シリスの言葉には何も答えてはこなかった。
元より答えてくれる事を期待していたわけではない。それに、答えを求めていたわけでもなかった。
これは、今からの話の出だしにすぎない――紅耶は一度だけリアに視線を向けた後、心を定めて口を開いた。
「まあ、いいよ」
もう一歩踏み出す。
男たちが拳銃を構えなおす音が聞こえる中、そんなことは気にせず紅耶は再び蒼瀬源二へと視線を向けた。
「裏に誰がいようと、そんなこと今はどうでもいいから」
例えリアを悲しませることになったとしても、蒼瀬源二を――リアの父親を少しでも変えることができるのであれば、心が折れてくれるのであれば全てを話さなければならない。
「蒼瀬博士……と一応言っておく。他の博士号を持っている人とは同列にはしたくないけど、リアの父親に対する礼儀として。ともあれ、あなたには表には出ていないけど、ある容疑がかかっていた――違法な人体実験をしているという容疑が」
ここまで話しても、蒼瀬源二はなにも言ってこなかった。否定もない。だが、周りの助手達の表情は違った。「何故それを」と言わんばかりの驚愕の表情に変わる。
その事自体に今更何を感じることはなく、紅耶は静かに後を続けた。
「リアが魔力暴走で気を失ってから、部屋に連れて帰って汚れた服を着替えさせたときに見つけた。リアの身体に微かにある注射の後や、手術の跡を。証拠を無くす為に時間が経てば消えるくらいの傷跡だったけど、それで確信した」
視線を鋭くさせ、言い放つ。
「あなたは、自分の娘に人体実験をしていた」
「…………」
「リアが魔法を使わなかった理由もこれで分かった。リアは魔法を使おうとすれば魔力暴走することを知っていた……実験によって無理やり力を高められていたから」
「…………」
無言で認めているのか、それとも、無言で否定しているのか……それは分からないが蒼瀬源二は黙ったまま紅耶の話を聞いている。




