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「どういうことだっ!」
井田は生徒会室に入るなり、シリスに向かって怒鳴りつけた。
「リアの行方が分からないだと!? きちんと説明しろ!」
「申し訳ありません」
井田――リアが転入生として始めて古城学園に来たとき付き添いで来ていたこの男は、とどまることなく容赦ない怒号をぶつけてくる。それを静かに受けシリスは頭を下げた。
――リアが魔力暴走で倒れた次の日、そして、今日から考えれば一日前、つまり昨日。
リアは古城学園、いや、魔法都市から姿を消した。
昨日は安静をとって授業を休ませていたのだが、放課後、紅耶が部屋に戻ってみるとすでにリアはいなかった。すぐに調べてみると、夕方、学園の外へ出て行くリアを生徒の何人かが見かけたらしい。
その後の消息は不明だった。そして、一日たって今日、電話が繋がらないと連絡してきたのがこの井田だった。聞けばリアに毎日電話をしていたらしい。
それで行方不明だということを知り、ここへこうして押しかけてきたのだった。
(――とはいえ)
紅耶は今だ怒鳴り続けている井田を冷ややかに見つめた。
(こんな時でも、父親が来ないとはね)
「聞けば蒼瀬博士の娘だということを学園中の生徒が知っているそうだな! おまえらは分かっているのかっ! 博士を恨む連中が誘拐したかもしれないんだぞ!」
「わたしたちも全力を挙げて探しています。必ずリアは無事に見つけだします」
「もう無事じゃないかもしれないだろうが! まったくお前達魔法使いは!」
殴りかからんばかりに、井田はシリスに詰め寄り唾を撒き散らしながらわめいた。実際、殴りかかってもよかったのだろうが自制したようだった。または、魔法への恐怖か。
ともあれ、井田は叫びつかれたのか一度口を閉じて睨みつけると、肩で息をしながら侮蔑的に――そう、リアがさらわれているというのに怒りではなく侮蔑を込めて、吐き捨てるように嘲った。
「まさか、お前達が隠してるんじゃないだろうな。大方、蒼瀬博士の娘と生徒に広めたのもお前達じゃないのか。魔法使いがやりそうなことだ」
憎しみと嫌悪を込めて――そして、正確には恐怖を込めて井田は精一杯背をそらせて嘲る。
「それは断じてありません。もしお疑いなら、魔法都市全域を調べていただいても結構です」
「……ふん」
冷静に答えるシリスに、井田は鼻をならすときびすを返してドアへと歩き始めた。




