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「そう、大人が勝手に作り上げて押し付けた理不尽を壊す。リアみたいな子が、みんな笑って過ごせるように」
紅耶もにっと笑った。そのために、自分とシリスがここに居て、古城学園があるのだと改めて確認する。
魔法が悪いものだというのであれば、魔法を正常に使えるようになればいい。そう成長させるために古城学園がある。そして、魔法使いがきちんと社会に認められるまでの露払いをするのが自分たちだと決めていた。
「頼んだよ、紅耶」
「シリスもでしょ」
お互いに言い合ってから微笑んだ。
「ふふ、やっといつも通りに戻ってきたわね」
「そうね……と言いたいところなんだけど」
シリスがふっと息をついて、紅茶に手を伸ばそうとすると、紅耶はまた少し視線を落として呟いた。
「ちょっとね、気になることがあって」
「リアのことで?」
頷きながら、紅耶は自分の言葉が正確ではないことに気付き言い直した。
「気になることというより、予感が当たったっていうことかな」
気持ちを持ち直してまた暗くなるのは嫌だったが、悪い直感ほどよく当たるのを感じて紅耶は溜息をつく。出来ることなら、話したくはない。
だが、話さなければならないということも直感で感じていた。当たってほしくはないが、予感がある。リアの問題が大きくなるという予感が。
「リアが『ママ』と言っていたから、前から気にはなっていたんだけど……今回のことで悪い予感が当たったかもしれない」
「リアの母親は三年前に病死したって書いてあったけど」
「そう。でもね、表には出ていないことだけどリアの父親、蒼瀬源二にはある疑いがかかってる」
「どういうこと?」
紅耶はポケットから一枚の紙を取り出して、シリスに渡した。
「ここに来るのが遅くなったのは、少し調べ物をしていたから。本当は、調べたりなんてしたくなかったんだけど」
「……なるほど」
紙を開いて目を通し、シリスは静かに呟いた。
実を言えば、その紙には蒼瀬源二に関する状況が書かれているだけで真実が書かれているわけではなかった。
だが、書かれている内容で真実を想像するのは容易だった。と、同時に、リアの苦しみの深さをもう一度認識する。
「どうするの?」
「…………」
返された紙を受けとりながら、シリスの問いに紅耶は静かに口を開いた。
静かだが、自分に誓うように凛とした声で言い放つ。
「リアと一緒にいる。理不尽は壊す。それだけよ」
そして、受け取った紙をぎゅっと握りつぶした。




