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「……紅耶は、魔法使いが嫌い?」
俯きながら呟く。まるで、なにか逃げ道を探すように……紅耶から自分と同じような気持ちが聞ける事を祈りながら。
「ううん。好きだよ」
「…………」
「いや、好きっていうのもおかしいか。別に魔法を使えろうが使えなかろうが、同じ人間だし。嫌いなやつは嫌いだし、好きなやつは好き」
「じゃあ……魔法を嫌っている人間は好き?」
その言葉に、紅耶はリアを見つめた。
質問の意味が分からないはずがなかった。リアがこの質問をする意味を。
その意味に一瞬だけ迷いが生じる。だが、一瞬だけしか迷わなかったのは、ここまでの質問をさせてしまったリアに答えるためにはこちらも真っ直ぐに答えるべきだとすぐに心に決めたからだ。
迷いのある言葉や……あるいは気を使った言葉ならば、すべて嘘の言葉になる。
「嫌い」
一言はっきり口にする。
この意味は分かってくれるだろう……いや、分かってくれることを祈りながら紅耶はそれだけを言った。
「…………」
リアは黙っている。俯いているのではっきりは分からないが、ショックを受けたわけでも悲しみを感じているわけでもないのは分かる。
それは、紅耶の言葉の本当の意味を理解していることを物語っていた。だが、聡い子だと喜びを感じることもない。分からない方が……苦痛を感じられない方が幸福な場合もあるのだから。
「……じゃあ、なんで」
静かにリアが囁く。無感情な声に、すべての感情を込めて。
「なんで、私を嫌いにならないの?」
「…………」
実際に声に出してみて、リア自身が思っているほどには無感情ではいられなかったようだった。微かに言葉が震えている……怒りの震えに。
そう、つまりはリアはすべてを分かった上で紅耶に問いかけていた。溢れ出る感情を抑えきれずに、言わずにはいられなかったのだ。それが無意味なことだとわかっていても、ただなにかを守るために……自分か、あるいは別のものを守るために。
「そうね、リアがもし魔法使いを嫌って心底憎んでいたら嫌いになってもよかったんでしょうね」
一歩リアに近づこうとして止める――いま近づけば、リアはきっと耐えられなくなって逃げてしまうだろう。
変わりに、紅耶は自分の言葉に力を込めた。触れられない分を言葉に託すように。
「いや、それでも嫌いにはならなかったか。喧嘩はしても最後は友達になったと思うから」
「……じゃあ、なんで嫌いっていったの?」
そう問われて、紅耶は少しの間だけ言葉を止めた。迷ったのは気持ちが揺れたわけではなかった、言葉でどう表していいか分からなかったからだ。




