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古城学園の敷地は広大だ。それもそのはずで、幼等部から大学院までの各校舎を含め寮や食堂、体育館などの各種設備を考えれば広くなって当然だった。おそらく、全てを見て回ろうとすれば一日では時間が足りないだろう。
(こんなところもあったんだ……)
紅耶の後ろについていきながら、リアはなんとなくそんなことを考えていた。この科学が発展した世界にはめずらしく、古城学園には自然が多い。『古い城』という名前の通り、少し古風な田舎っぽい雰囲気が全体としてあった。
遠くに桜並木が見える自然公園……名称が分からないので自然公園風な場所としかいえないのだが、そこを歩きながらリアは紅耶の背中を見つめた。
――わたしも一緒だから。
さっきの言葉が甦る。紅耶は一緒だと言った。嫌われていることが一緒だと。
「……紅耶」
リアの呼びかけに、紅耶が振り返る。いつもと変わらぬ普通の表情で。
その姿に、一瞬迷いがでた。さっきの言葉は、もしかしたら嘘を言っていたんじゃないかと……自分を落ち着かせるために、わざとそう言ったんじゃないかという考えがよぎる。
「さっきの言葉……どういうこと?」
だが、呼びかけた以上は黙っているわけにもいかず、リアはそのままの疑問を素直にぶつけた。
「リアと一緒ってこと?」
「……うん」
こくっと頷く。言葉にだして聞いてしまった以上はもう後には引けなかった。どういうことを言われようと聞かなければならない。紅耶が嫌われていることが本当であっても、嘘であっても。
「まあ、大したことじゃないよ」
紅耶はリアの真剣な視線を受けてにこっと微笑むと、いとも簡単にさらりと口を開いた。
「魔法使いとの共生に向けた研修生っていっても、差別化して魔法都市を作った張本人の政府から送られた人間じゃ、あまり良く思われなくて当然だからね。魔法使いでもないし」
そこまで言ってから、紅耶は片手を上げて肩をすくめた。
「わたしは気にしてないんだけど、魔法使いにとっては魔法を使えない人間っていうのはある意味特別みたい。そういう感情を、魔法使いが悪いものだっていう感情を世界的に作ってしまったから、魔法の社会では魔法を使えない人間のほうが特別なように見られてもしょうがないともいえるけど」
やれやれと呟いてから、紅耶はあははと笑った。
「まったく、ややっこしいと思わない? そんなわけで、わたしも魔法使いの人たちにはあまり良い感情を持たれてないってわけ」
大したことでもないように……おそらく実際に大したことではないと思っているのだろうが、紅耶は笑顔であっさりと言い切ってきた。
その笑顔が眩しくて、リアは俯いた。嫌われているのは一緒なのに、まるで自分だけが責められているような気がしたからだ。




