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研修生と化物の女王  作者: shio
第三章 同じ二人
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「…………」


 黙ったまま見上げると、紅耶は春の風を気持ちよさそうに受けていた。

 このまま逃げ出したい衝動にかられる――そんな時だった。


「おっと、もうこんな時間か」


 授業終了のチャイムが鳴る。時間を考えるなら今から昼休みだった。


「わたしたちも、ご飯にしようか」


 そういって、微笑む紅耶になにも言えず……。

 リアは黙ったまま、歩き始めた紅耶の後ろについていった。


「さーて、今度はどこにいこうか」


 昼食が終り、食堂を出てから紅耶は満足そうにんっと背を伸ばした。


「…………」


 リアは屋上から黙ったまま、紅耶の少し後ろを歩いていた。紅耶から話しかけられなかったというのもあったが、今はそのほうがよかった。話せる気持ちじゃなかったから。

 昼休みの喧騒の中、不自然な静寂だけが自分の周りにあった。喧騒の中にある視線と囁き。疑問に思うまでもなく、答えは分かっている。その視線と囁きは、自分に対してのものだと。

 誰かが広めたものではなく、自然に広まったものだろう。もう、ほとんどの生徒がリアの父のことを知っているようだった。それだけの視線と囁きが自分の周りを支配している。

 疑問に思うことはなかった。覚悟していたことだったから。

 ……だが、その決心が揺らいでいることを自覚し、リアはぐっと唇を噛み締めた。我慢ができず、足を止め紅耶の背中に向かって鋭く呟いた。


「……部屋に戻る」


 声に紅耶が振り向いた。感情を抑えながら……そうしないと怒鳴りそうなるのを抑えながら、言葉を続けた。


「私と一緒じゃない方がいい……一人にして」

「それは、みんながリアのことを嫌っているから?」


 喉が震え、『そうよ!』と叫びそうになるのを飲み込む。

 ぐっと拳を握りひたすら我慢する……と、そんな時、紅耶はぽんっとリアの頭を叩いた。


「気にしなくていい。わたしも一緒だから」

「――――」


 その言葉に、はっと顔をあげる。


「せっかくだし、もうちょっと付き合ってよ」


 そのまま頭に置いた手でぽんぽんと二回ほど叩くと、紅耶は先を歩き始めた。


「…………」


 なんと言っていいか分からず……でも、そのまま部屋に帰ることもできないまま、再びリアは紅耶の後について歩き始めた。


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