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――朝、目が覚めると、先に起きていた紅耶が挨拶をしてきたあと、すぐにこう言った。
「今日一日、わたしにつきあってくれない?」
そして、疑問に感じる間を与えないまま紅耶は勝手に話を進めていき、朝食が終わった後、リアは紅耶とともに中庭を歩いていた。
「ん~、いい天気。晴れてよかった。雨だったら外にでられなかったしね」
疑問はいまだ解けないまま、気持ちよさそうに背伸びをする紅耶を見上げる。何故急に散歩……散歩としか思えないようなことを始めたのかもわからないし、何故今日したのかも分からなかった。
「…………」
紅耶を見上げていた視線を下ろし、今度は中庭全体を見渡した。当然のことながら大学部以外の生徒、つまりは制服を着た生徒はいなかった。そう当然だ、今日は休日ではないのだから。初等部、中等部、高等部は授業中だった。
「あの……紅耶」
「ん?」
「授業はいいの?」
今更ながら、当たり前のことを質問してみた。初等部である自分もそうだし、高等部である紅耶にも授業がある。いまこうしているのはさぼり以外の何者でもない。
「いいんじゃない。一日くらい」
一応心配してリアは言ったのが、紅耶は大したことでもないように事もなげに言った。まあ確かに、もし授業を受けないことに少しでも心苦しいところがあれば、こんなところで堂々と散歩などしていないだろう。
(……いいのかな)
昨日の今日で、こういう事をしていていいのかなと思ってしまう。
昨日、父のことがみんなに広まり色んな覚悟をしていたのに、今日はこうして散歩をしている。なにか拍子抜けしたような、そんな不思議な感じがずっとある。
授業中もそれ以外の時も、ずっと嫌悪と拒絶の視線を受ける覚悟をしていたのに。
「授業受けたかった?」
「…………」
紅耶に問いかけられ、言葉につまった。
覚悟はしていた……そうなって当然だし、耐えるのも当たり前だと。
(本当に?)
自分で自分に問いかける……答えを出したと思っていたのに、答えが出ていなかった気持ちにもう一度。
「授業ってさ」
紅耶は急に明るい声で別の質問をしてきた。
「何のためにあると思う?」
急なことに質問の意図が分からずリアは顔を上げた。授業を受ける受けないという話の流れなら決しておかしい質問ではない、だが、いま授業の意義を問われるとは思わなかった。
答えられないまま見つめていると、にこっと笑って紅耶は続きを話し始めた。




