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研修生と化物の女王  作者: shio
第三章 同じ二人
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 それを思い出し、シリスは笑ってしまった。

 自分が守らずとも良かった。リアのことは、現に今まさに守ろうとしてくれている人間がいる。


「何がおかしいんですか?」


 急に笑ったのを不審に思ったのだろう。真面目なことを宣言した後なので当たり前ともいえるが。

 ともあれ、気味悪く問いかけてくる役員にシリスは首を振って謝ってから、もう一度にこりと笑った。


「すみません。わたしが『手出しさせない』なんていわなくても、すでに守ってくれていました」

「守ってくれている? 誰がですか?」

「研修生である詩鳳紅耶です」


 その名前に役員たちが顔を見合わせた。そして、ほどなくして納得する。

 研修生は魔法都市の市役所にとって頭の痛い問題の一つではあるが、今回の蒼瀬リアに関して言えば妙薬となる。

 元々、反政府の魔法使いからの恨みを買っている研修生であれば、蒼瀬リアを守ったとしても何の問題もなかった。蒼瀬リアは魔法使いになったが、どちらの立場かといえばまだ政府の関係者であり研修生の仲間と見られるからだ。

 そして、研修生である詩鳳紅耶は魔法都市の管轄の外にあった。組織でいえば、政府に属している。何をしてもその責任は政府にいき、市役所の責任問題にはならない。加えて、紅耶は生徒会の役員にもなっていた。生徒会役員の問題は生徒会長の責任となり、これもまた市役所には関係がない。名目上、生徒会の管理は市役所となっているが、その言葉どおり誰もが「名目上」の管理になっていることは知っている。

 つまり、研修生であれば市役所に不満と反感が来ることはない。


「なるほど、分かった」


 全員がその考えに至ったのを察して、今まで黙っていた市長が会議の終わりを告げるようにシリスに向かって口を開いた。


「あなたに全てをお任せする、レイティーナ生徒会長」

「わかりました」


 シリスは短く返し、小さく頷いた。

 勘違いしている――市長や役員の表情を見て、シリスはすぐにそう思った。

 紅耶に頼んだのは都合がいいからとかという問題ではなかった。紅耶なら、『本当の意味でリアを守ってくれる』と信じているから頼んだのだ。いや、紅耶しかできないとも思っている。

 ただ、身を守るだけじゃない。本当に守るというのは心も守るということだ。笑って生活できるように。


(わからないでしょうね、あなたたちには)


 この役員の大人たちには分からないだろう。分かるはずもなかった。一身の安全をただただ守ろうとし傍観している、自分しか見えていない人間には。

 だからこそ、シリスは全て自分に任せるようにいった。最初からここにいる大人たちなどに期待などしていない。


『人間は自分で立ち位置を決めることができる。即ち、責任か傍観か』


 自分が書いた自戒の言葉。自律、自制、自戒。自分が完璧ではないと常に自覚していなければ、責任者たる資格はない。

 この世界の傍観者ではなく責任者であろうと自分で決めたとき、シリスはまず自分が未熟者であり若輩者であることを自らに言い聞かせた。

 自分の選択が人の命を左右することがある――だからこそ、不断の向上を決意した。


(わからないでしょうね)


 学ぶ目的もなく、学ぶこともしない傍観者には。

 期待などしていない。自分と、生徒会役員と、部代表と――紅耶だけでなんとかする。

 だから、


(――後は任せたわよ、紅耶)


 シリスは心でそう呟き、そして、椅子から立ち上がった。


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