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数秒、シリスは黙った。その間に何か発言があるかとも思ったが誰も何も言わなかった。
それもそうだろう、とシリスは胸中で呟いた。言えるはずがない。蒼瀬リアの転入の情報が入り、一番慌てたのはここにいる役所の大人たちで結局は具体的な対応を決めきれないまま転入の日となり、全てをシリスに一任することになった。最初からシリスが自分に任せてくれといっていたにも関わらず。
今、ここで話している会議も無駄なことでしかない。答えなど一つしかないのだから。
「現状維持。それしかないでしょう。蒼瀬リアは今のまま学園に居らせ、普通に生活させる。それでしか、今の様々な問題を解決する方法はありません」
「それは、ただ問題を先延ばしにしているだけでは?」
黙ったまま話が終わるかと思いきや、すかさず役員の一人が口を開いた。
「政府のほうはそれでいいとしても、反政府の魔法使いたちの動きが活発になるのは間違いない。もし、蒼瀬リアに危害が加えられたら……」
続けて別の役員も口を開く。とはいっても、この役員はリア自身の心配をしているわけではないだろう。リアが傷つけられた後の状況が心配なだけだ。反政府の魔法使いが勢いづくことと、政府に魔法使い糾弾の口実を与えることが。
(というより、すでにもう手遅れでしょうけどね)
反政府の魔法使いたちは魔法都市市役所のことを政府の犬としか思っていない。リアの情報が出た時点で、それ幸いとすでに動き出しているだろう。そして、常にこちらを監視している政府も同時に動き始めているに違いない。
それを思えば、役員たちの不安も当然だろう……だが、内容よりも自分に意見をいった二人の役員に少し感心しながら、シリスは誰に対してそれをいっているのかを分からせる為に一言の元に否定した。
「問題は起こさせません」
迷いなくはっきりと、底知れない強さを込めて――シリスは厳と言い放つ。
「反政府の魔法使いにも、政府にも文句は言わせない。リアには誰も手出しさせない」
――そういえば。
頭の中で蘇る。数ヶ月前の光景。この場所、この言葉。
『文句はいわせない。研修生には誰も手出しさせません』
実際はこちらが守ろうとしなくとも、この研修生は自分でなんとかしてしまった――今は生徒会役員の一人である詩鳳紅耶は。




