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「分かっていますね、レイティーナ生徒会長?」
問われてシリスはどうしようかと迷った。中傷されるのは慣れていても、相手が答えを分かっている質問にわざわざ答えるのも馬鹿馬鹿しい。なので、ここは好きなようにすることにした……つまり、意地悪をすることに。
「いえ、分かりません。どういうことですか?」
「…………」
涼しく答えたシリスの言葉に、会議室にいる全員が沈黙した。
そのことに、シリスは内心で皮肉に笑った。まったくなんだというのだろう、この大人たちは。散々中傷した挙句、少しでも言い返せば恐れ黙る。
子供の話し合いか、とさえ思う。いや、そういうと子供に対して失礼だろう。少なくとも、うちの生徒たちのほうがずっと優秀で度胸がある。
それはともかくとして、面倒なことには変わりはなかった。この分だと、また無駄な時間を過ごしてしまう。尋問を早く終わらせるには、こちらも協力するしかない。おいしい昼食のために――ここにいる役員の人たちとは断じて一緒に昼食などとりたくない。
「冗談です」
シリスはふっと息を吐き一言そういうと、話を続けた。
「蒼瀬リアを蒼瀬源二の娘だということを隠していたことによって起こる様々な問題のことでしょう? わたしの不信感だけではなく、全ての魔法使いの情報を把握しているここの、市役所の不信感にもなりかねない」
シリスはここで一息ついた。話す内容とは全く関係なく、別のことが頭に浮かんでしょうがない。
――考えてみれば、ここのいる役員たちは確かに優秀な『取調官』かもしれない。こうして、自ら自白させているのだから。
「更に、隠したと捉えられることによって、わたしやあなた方が蒼瀬源二と、いえ、政府と繋がっているかもしれないという疑いもでてくる。そうなれば魔法使い同士の問題となり、下手をすれば内部で争乱が起きる可能性さえでてくる」
「…………」
肯定も否定もなく、周りの大人たちは黙ってシリスの言葉を聞いていた。当然だろう。お互いに分かっていることを並べているだけなのだから。
「更にいえば、ここで蒼瀬リアをどうにかすることもできない。保護しようとすれば反政府の魔法使いたちの反感を買い、反政府の魔法使いに差し出せば政府との戦争になる。ひとまずこちらが保護して、魔法使いたちと政府との交渉材料にするのは論外。危うい天秤に載せて均衡を保たせるのは良策ではないし、その時点でもう後戻りできない問題へと発展してしまう」
そこまで話を続け、シリスは言葉を止めた。
まったく、ともう一度心で嘆息する。「分かっている」のだ。全て何もかも答えはすでに出ている。




