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(少し遅くなっちゃったか)
生徒会としての仕事――今回は街での騒動を片付け、紅耶は自分の部屋に帰っていた。
(……本当なら、なにか作ってあげたかったんだけど)
歩きながら、寮の食堂からもらってきたサンドイッチとスープが乗ったトレイに視線を落とす。水沙から電話があって、リアが夕食を断ったのを聞いたからだ。
今日一日で、リアがどういう状況になっているかは大体分かっていた。本当なら側にいたかったのだが、だからといって生徒会としての仕事を放っておくわけにもいかない。
(それに、特別扱いするわけにもいかないし、リア自身がそんなのは望まないだろう。というより、特別に扱いたくない)
リアもされたくないだろうが、紅耶自身も特別扱いする気はまったくなかった。リアの家庭の事を考えて特別に守ろうとすること自体がおかしなことだろうし、それをしてしまって一番傷つくのはリア本人だった。
(……まあ、そうはいってもやっぱり気になっちゃうんだけど)
特別扱いをするつもりは毛頭ないが、気になるのはしかたがなかった。
後輩として、ルームメイトとして……そして、友達として。
「…………」
と、そこで自分の部屋の前に着き、紅耶は足を止めた。
(ちょっと違うな)
片手でトレイを持ったまま、空いたもう一方でノブを握って紅耶は自分の考えを否定した。
友達として、というのはもちろんある。だが、それ以上にリアのことが気にかかるのは……。
(きっと、わたしやシリスと似ているからだ)
そう思ったのと同時に、紅耶は部屋のドアを開けた。
「……っ!」
カチャっという音とともに、少し空いたドアの隙間から微かに息を飲むような声が聞こえた。そのままドアを開けていくと、電気もつけていない暗い部屋の床に長方形の明かりが伸びていく。
その明かりは僅かながらも部屋全体を照らしていき、見慣れた風景を浮かび上がらせていった。
そして、
「…………」
驚いたようにこちらを向き、携帯電話を握り締めているリアが自分のベッドに座っている姿があった。




