21
「だけど」
襲ってくる人間はいないと確信しても、同じ考えを持っている襲ってこない人間のほうがずっと問題だ。そのことを意識し、シリスの言葉の後に紅耶は溜息とともに呟いた。
「周りの感情的な問題だけは、個人の気持ちだから防ぎようがない。父親への嫌悪でリアの事を嫌悪する人間も出てくる。周りの視線と接し方は自ずと変わってくる」
「リアに話したほうがいいんじゃない?」
「どう話すの? 『あなたのお父さんのことがみんなにばれたから、覚悟していて』って言うの?」
「……それもそうか」
「それに、自分で気付くよ。リアは聡い子だから」
今日一日過ごしていればリアだけではなく、水沙も鈴も気付くだろう。それは止めようがなかった。
シリスが生徒会長だといっても、『いじめは駄目』とは注意できても感情的なものまで抑制することはできない。『リアと普通に接しろ』なんていうのも問題外だった。
「リア本人も覚悟していたと思う。本当なら父親のことがばれないまま自然と気持ちが解決していけばいいと思っていたけど、こうなった以上は――」
「こうなった以上は?」
「向き合って話してみるよ。リアの本当の気持ちを知るためにも」
いつか必要だとわかっていたことだし、向き合い受け止める覚悟もとうにできていた。
だが、
(――ママか)
転入した来た次の日の朝のことが頭に浮かぶ。
あの時、リアは泣いていた。
受け止める覚悟はできている――それでも、リアの心になにか傷があるとわかっていて、なお見なければならないことを改めて自覚し、紅耶は胸に浮かんだ重い何かを全て受け止めるように拳を握った。




