―― 詩鳳紅耶 一年前 ―― 3
(まあ、でも)
ハブることはできても、完全に外されることがないのも分かっている。現場参加が危うくなっても、それは文字通り『危うく』なっているだけに過ぎない。
上層部を甘く見ているわけじゃない。甘く見ていないからこそ、こちらを完全に外せないことは分かっていた。それだけの実力を――断トツでトップの成績を出している人間を外せないことは知っている。様々な問題と双方の被害を回避する為にも、最後には頼らざるを得ないことを。
(おかしなものよね)
手柄を独り占めしたかったわけじゃない。ただ、魔法使いを化物と考えている連中――化物と考え恐れている連中に相手をさせるわけにはいかなかっただけだ。
恐れがあるから簡単に殺す。そして、殺されると分かるから魔法使いも殺されないように全力で力を使う。だから、相手をさせるわけにはいかない。
魔法使いを殺すだけで終わらせることなんてさせない、絶対に。罪は償うべきだが、それと『魔法使いは化物だから殺していい』というのは別だ。最終手段として――その最終の線引きも曖昧なものだが――認められていても許すわけにはいかない。
だが、
そのせいで解決率百パーセントの成績を収めてしまい、首席になってしまっているのは皮肉なことだった。上層部は、自分の事を――多少、いや、多大な問題はあるものの――自らが育て上げた優秀な研修生だと思っている。そう、化物と考えている人間たちに最も評価され、殺されないようにしている魔法使いたちには憎悪されているのだ。
今に始まったことではない。それでも、
(おかしなものよね)
そう思わずにはいられない。まあ、認められたいとも思ってはいないのだが。
(わたしは、わたしの生き方をするだけよ)
無線のイヤホンからザザッとノイズが混じり始め、少女は寄りかかった塀から身体を離した。メンバーによる作戦妨害の合図だ。
『はんちょぉ~~、三十分が限界だよ~~』
「十分よ。終わったら連絡するから」
自前の無線から聞こえた声に返事を返す。
内部をかく乱し進行している作戦――現場に到着次第、包囲からの突撃という単純極まる作戦を遅延させ、この場所へは誰一人来させないようメンバーには頼んでいた。いつも使っている手だが、邪魔されたことは『不思議と』一度もない。邪魔できないのか、または――わざと邪魔しないのか。
(まあ、いいけどね)
愚痴りたくなる気持ちを再度抑え、少女は笑った。
(わたしだけでいい)
嫌味を言い、嫌がらせだけをして危ない現場に行かない上層部のほうが自分にとっても都合がいい。魔法使いに対するのは自分一人で十分だ。メンバーを危険な目に合わせるわけにはいかないし、他の人間は邪魔なだけになる。
「――おい、こっちだ!!」
遠くから声が響き、少女は二つの無線を捨てた。




