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「ただ単純に魔法が使えない、魔法を使いたくないっていうのならそれでいいんだろうけど……それだけじゃないような気がするんだよね。なんとなくだけど」
「単純にか」
紅耶に続いて呟いて、シリスは考え込むように俯いた。
確かに、リアの家庭環境と魔法使いの関係は複雑だ。だが、感情で表せばたった一つしかない。
つまりは、魔法使いへの嫌悪だけのはずだった。単純に好き、嫌いで分ければ、嫌いというのは間違いない。父親のことを考えれば。
だが――
「なるほど、そうね」
紅耶の言葉に思索を巡らせて、感じている違和感の正体が分かったような気がした。
単純に魔法を嫌悪しているのなら確かに簡単な話だった。だが、リアは魔法を嫌悪していない。
嫌悪して当然なのに、何故か嫌悪していなかった。今日の水沙と鈴の話で、拒絶しようとしているのは分かったが、それは言葉通り『拒絶しようとしている』のだ。拒絶している、ではない。つまり、リアは無理やり嫌いになろうとしていることになる。
そう考えれば魔法を使わないことも、ただ嫌いだから使いたくないという風には考えられなくなる。
「――そうね」
そこまで考え、シリスはもう一度呟いた。確かに違和感はあった、リアと最初に会った時から。
リアには『恐怖』がなかった。本来なら恐怖があって当然なのに、それが少しも感じられなかった。
つまり、「魔法使いは同じ人間じゃない」と教えられていた恐怖と、「敵と教えられた魔法使いに何かをされるかもしれない」という恐怖が微塵もなかったのだ。
そう、家庭環境を考えればリアはもっと魔法使いに対して警戒していいはずだった。例え、自分が魔法使いになったとしても、意識をすぐに変えられるはずがないし、育てられた感情も消せるはずがない。




