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「――それで」
静かな空間に心が落ち着くのを感じながら、シリスは口を開いた。窓の外を見つめていた紅耶がこちらに振り向くのを待ってから、言葉を続ける。
「なにか引っかかっていたみたいだったけど、どうしたの?」
「ん……リアの魔法のことでね」
「魔法実技で見学していたこと?」
シリスも気にしていたことではあったが、リアが見学した理由も分かっていたので少し意外そうに聞き返した。
魔法実技とは、その名の通り魔法を使う授業のことだ。魔法の具現化と制御法に関してはまだ理論が確立されていない為、どうしても実際に魔法を使うしか勉強の方法がなかった。正確にいえば、勉強というよりも、魔法を制御することが一番の目的なのだが。
なので、魔法実技では理屈よりもまず最初に魔法を使わせることを優先させていた。魔法使いが魔法使いであることを一番実感できる授業であるため、生徒たちにとっては楽しみな授業の一つになっていた。
「でも、リアが見学するのは不思議じゃないでしょ。最近、魔法に目覚めたってことは魔法の使いかたが分からなくて当然だし、父親のことを考えれば魔法を使いたがらなくてもしょうがない」
今までの――といっても、まだ転入してから一日しかたっていないが、昨日からのリアを見ていれば魔法使いに対してどういう感情を持っているかは分かっていた。それに気付かない紅耶でもないはずだが。
「それはそうなんだけどね」
否定せず、だが、まだなにかを考えながら紅耶は曖昧に頷いた。紅耶もシリスと同意見だったが、直感的になにか引っかかるものがある。
「それだけじゃないってこと?」
そんな紅耶の気持ちを察して、シリスがもう一度問いかけてきた。
「まあ、ね。使いたくないのはよく分かるんだけど」
「まさか、魔法使いじゃないってことはないでしょ」
「だね。それだったら転入させる意味がないだろうし」
研修生といったような特別な生徒ならともかく、魔法使いじゃない人間が魔法使いと詐称して転入してくる意味はどう考えてもないだろう。もし、それこそ極秘で魔法使いのことを調べようと考えていたとしても、魔法都市に居住していない魔法使いを探して転入させればいいことだった。魔法使いと偽り、しかも、自分の娘を転入させなくともいいはずだ。
「だったら、なにを疑問に思っているの?」
「んー?」
背もたれに体重を預け、紅耶は天井を見つめた。実をいえば、直感以外の何者でもないので説明するのは難しかった。




