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「どうしたの、紅耶?」
「ん? うん」
珍しく曖昧に返事を返すと、紅耶は水沙と鈴に顔を向けた。
「ねえ、水沙、鈴。魔法実技の時のリアはどんな感じだった?」
「うん……実技の時も一緒だったよ。ずっと元気がなくて」
「いや、そういうことじゃなくて、魔法を習おうとした?」
「え? えっと、ううん。先生にいって、今日は見学してた」
「そう……」
「どうして、紅耶ちゃん?」
シリスと同じように聞いてくる水沙に、紅耶は表情を変えると明るく言った。
「ちょっと気になってさ。でも、魔法を習いたくないのなら、リアが自分から習おうとするまで待ったほうがいいかもね」
「そうね、先生たちにもそう伝えておくわ」
紅耶の言葉にシリスが頷く。学園の先生の中で、無理に教えようとする人間はいないだろうが、伝えておいて余計というものはない。特に、そういった小さな心の変化に細心の注意を払うのは大事なことだった。
「今はリアの好きにさせておこう。後はシリスのいう通り、水沙と鈴はいつも通りに接して。そのほうがリアも嬉しいだろうから」
「そうかな?」
「そうだよ。だから、遠慮しないでがんがん関わってあげて」
「紅耶ちゃん……うん、わかった」
「よっし! じゃあ、まずは夜ご飯を誘おう!」
「そうしてあげて。というか、二人が言わなかったら、わたしのほうから誘うつもりだったしね。もちろん拒否権なしで」
笑顔が戻った二人に紅耶も笑顔を返しながら、その後は、五人で夕食は何を食べるかを相談していった。
「じゃあ、また後でね、紅耶ちゃん」
「迎えに行くからね、ちゃんとリアちゃんと一緒に待っててよ」
「りょーかい。そっちも遅れないようにね」
すっかり元気が戻った水沙と鈴に紅耶は軽く手を振って答えると、二人はそのまま生徒会室を出て行った。
「二人とも元気になってよかった」
二人を見送ってから瑞穂が席を立った。今、生徒会室にいるのはシリスと瑞穂と紅耶だけだった。
「新しい紅茶入れてくるね」
「ありがとう、瑞姉」
お礼をいう紅耶に笑顔を返してから、瑞穂はポットを持ってテーブルから離れていった。
初等部の二人がいなくなり、急に静かになった部屋に時計の音と微かな食器の音だけが響いていく。それに比例するように、窓の外で輝いていた夕日の光も影を落としていき、紫に染まりつつある空は静かな夜の足音を一歩一歩確実に歩ませていた。




