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(……だけど)
こちらが気にしなくともリアのほうが気にしているのであれば、やはり時間がかかってしまうのはしょうがないといえた。
(まあ、それでも、それこそ関係ないか)
リアがどうであれ、こちらも特別に何かをすることはなかった。それは他の転入してきた生徒と一緒だった。
いつもの自分たちでいることが一番良いことで、それが一番相手のため――リアのためだということも分かっている。
一番大事なのは「相手がどう在るか」よりも「自分がどう在るか」。
だから――
「水沙も鈴もあまり深く思いつめたら駄目よ。心配するのはわかるけど、こっちまで暗くならないこと。いつも通り、笑顔で明るくね」
心配顔で見つめてくる水沙と鈴に向かって、シリスは内心の思索を打ち払ってにこりと笑った。
「はい」
「うん、わかった」
「ん、よろしくね」
頷く二人に、シリスはもう一度微笑んだ。できるだけ水沙と鈴には笑顔でいてほしかった。魔法使いとリアの父親のような複雑な大人の――それでいてすごく馬鹿らしい状況のことなどを二人には気にしてほしくないし巻き込みたくないという思いがある。それも含めてリアの父親のことは話す必要がないと考えていた。
(ややっこしいことは、わたしたちだけで十分。リアにしてもね)
水沙と鈴と同様、リアにももうややっこしいことは気にしてほしくなかった。
(古城学園に転入してきた以上、何があろうが絶対に守る。何もさせないし、何も言わせない)
何より、魔法都市という制度を推進した一人がリアの父親である以上、こちらに何も言えないし、言う資格はない。
(いや、そもそも何も言う気はないか。あちらにして見れば、話すのも嫌だろうしね)
何故そこまで魔法使いを嫌悪するのか、シリスにしてみれば不思議で仕方がないのだが、感情的な問題を論じてみてもそれこそ仕方のないことだった。
ともあれ、リアには複雑な心情があるものの、それは時間が解決してくれると思っていた。もちろん、リアが早く笑顔で生活できるように最大の努力はするが、絶対に時間が必要な場合だってある。
焦る必要はない。これから一緒に過ごしていくのだから。
(――悪い癖)
水沙と鈴に『笑顔で明るく』と言ったにも関わらず、知らず知らずにまた自分が暗い気持ちになっていることを自覚して、シリスは心の中で嘆息した。リアに笑顔でいてほしい気持ちから深く考えてしまうのだが、考えすぎるのも良くないだろう。
まったく、と思い直して、一息入れようと紅茶に手を伸ばし――ふと、自分と同じような表情をしている紅耶に気づいた。
ただ、同じ表情はしていても、同じことを考えているとは限らない。そう思い、シリスは一口紅茶を飲んでから紅耶に向かって口を開いた。




