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リアの父親のことに関しては、シリスと紅耶と瑞穂以外知らなかった。水沙や鈴、そして、他の生徒たちには話していない。それは、水沙や鈴に話すのが不安というわけではなく、単純に話す必要がないと思ったからだった。
もちろん、他に話していないのは無用な混乱を生まないため、という考えもある。だが、それ以前に、誰もが家族のことを知りたがらず、話すらすることもなかった。
魔法使いでなければ魔法都市には住めない。つまり、家族も魔法使いでなければ一生離れ離れで生きていかねばならないのだ。その現実に、自然と生徒たちは家族の話をすることを避けるようになっていた。
(いや、それだけじゃないか)
離れ離れという現実と悲しみを思い出さないため、というのも確かにあるだろう。だが、魔法使いと認められた時にできた決定的な『溝』と絶対的な『壁』が家族の関係を無くしてしまっていた。
魔法を使う人間と、魔法を使えない人間という溝。無意識に出来上がった『別の人間』という壁。
(いや)
シリスは自分の考えにまた否定した。
溝を埋めることも壁を壊すこともできたはずだ。それを作ったのは一部の大人たちに過ぎない。そして、『そういうものだ』と誰もが認識するようになった世界が形作られた。
(魔法使いと一般の人を完璧に分けるようにした、その病的なまでの徹底振りはある意味感心するけどね)
『面会』も魔法都市内でしかできず、一泊するのにも長い許可申請が必要だった。当然、魔法使いは都市外に出ることはできないため、一般の人間が魔法都市に泊まる許可だ。同意書なるものまであると聞いたときは、さすがにシリスも気分が悪くなった。傷害、死亡に関する同意書――つまり、『何かあっても自己責任で、国に責任はありません』ということだった。
そこまでする徹底振りの理由は考えずとも分かった。管理し、そして、もし何かあれば……一掃する。そうなった場合、一般の人間がいると都合が悪い。だからこそ、魔法使い以外は住めないようにした。
(まったく……)
内心でシリスは溜息をついた。おかしな世の中だ……おかしな世の中だと誰も考えないほどにおかしな世界だ。
そして、今の世界を形作った一人。世論を操作しその徹底振りを実行した一端がまさにリアの父親だった。
(まあ、だからといって、リアには何の関係もないけどね)
まだ九歳であるリアに父親のことを責めるのは、筋違い以前に馬鹿馬鹿しいことだろう。
自分とリア、その関係だけでいい。それしかなく、全てそれだけで良かった。




