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生徒会と各代表は忙しい。生徒会室に全員揃うことなどは滅多にない。
だが、それでも生徒会長が動くほどには忙しくはなかった。逆にいえば、会長が動くときは重大事件が起きた時といえる。
というより、そもそも生徒会長であるシリス自身が、
『大事な場合はすぐに呼びなさい。汚れ仕事はわたしの仕事よ』
と話している為、生徒会役員も代表もシリスをなるべく動かさないようにしていると言ったほうが正しいかもしれないが(ちなみに、最近は『汚れ仕事はわたしと紅耶の仕事よ』に変わっている。紅耶も紅耶で『まあ、いいけど』と了承していたりするのだが)
ともあれ、つまりはシリスが生徒会室に居るということは魔法都市は概ね平穏だということだ。ということで、紅耶たち三人が生徒会室に入ると、昨日と同じようにシリスと瑞穂が部屋にいた。
「リアのこと?」
瑞穂が人数分の紅茶をテーブルに置いていく中、何故か混ざってきたシリスが最初に口を開いた。
「いやまあ、そうといえばそうだけど。というか、仕事しなくていいの?」
「大事なのは終ったから。後は、確認のために再度目を通すくらい」
紅耶の問いに答えながら、シリスは続けてはっきり言った。
「それに、リアのことのほうが大事でしょ。わけのわからない書類よりもよっぽど」
「それはわたしもそう思うけど、わけのわからない書類って言い切るのもどうなの?」
「いいじゃない。それよりも、今はリアのこと」
紅耶の指摘を一言で流して、シリスは水沙と鈴に視線を向けた。
「なにかあった?」
「えっと……」
問われて、水沙は口ごもった。鈴のほうも同じような困った表情になっている。
「なにもなかったんですが、リアちゃんがなにか元気がなくて……」
水沙はぽつりと呟いた。落ち着いて考えてみれば、なにかあったかといえばなにもなかった。少なくとも、リアが態度を変えるようなことは。
そのことに今気付き、どう説明していいかわからず水沙と鈴はさらに困惑顔になってしまった。
「なるほどね」
水沙の言葉と二人の表情を見て、シリスは納得したように頷いた。
転入生に対して、ほとんどの生徒は暖かく迎えるとは思っていたが全員が全員そういう生徒でもない。だから、『なにもなかった』というのは喜んでいいことかもしれなかったが……逆にいえば、なにもなかったということは後は本人の心の問題ということになる。感情や心の問題となると、水沙や鈴が困惑してもしょうがないだろう。
「気持ちが不安定になるのはしょうがないか」
「そうだね、すぐに慣れるというのは難しいと思うし、やっぱりゆっくり接していくのが一番いいんじゃないかな」
紅茶を置き終わって、シリスに同意しながら瑞穂は椅子に座った。
「ん、そうね」
もう一度シリスは頷きつつ……それでも、普通の生徒に比べて笑って生活できるまで時間がかかるということはどこかで認めていた。それは、瑞穂も紅耶も同じだろう。




