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「それじゃあね、水沙、鈴……蒼瀬さんも」
「うん、また後でね」
クラスメイトに軽く手を上げて返事を返しながら、水沙は顔を曇らせて横にいる二人へと顔を向けた。
「……うぅ」
「…………」
鈴はどうしたらいいか分からず瞳を潤ませ、リアは一時限目から放課後までまったく変わっていない無表情をしていた。
そう、放課後までずっと……
夕日が窓から差し込むオレンジ色の廊下に、立ち尽くした三人の影を作りながら水沙は放課後までのリアのことを思い起こしていた。
気づいたのは一時限目が終った後の休み時間だった。授業の感想を聞こうとして声をかけると、リアは無表情のまま……昨日初めて生徒会室に来たときのような無表情のままこちらの話に答えてきた。
その後も、話しかければ返してくれクラスメイトの質問攻めにも答えていたのだが、まるで機械にでもなったように口調と態度はすべて同じだった。
(きっと、一日目だしびっくりしただけだよね。それで疲れて……)
水沙は自分に言い聞かせながら、それが虚しく心に響いていることもどこかで認めていた。なにが原因かわからないが、リアは紅耶と朝話していた時とは違って、明らかに拒絶の態度をとっていた。きっと、クラスメイトの全員もそう感じていただろう。
もとより転入生が珍しいとはいっても、まったくいないわけではない。転入生の傾向からみれば、拒絶の態度を取るのは珍しいことではないとは分かってもいた。おそらく今日リアと初めてあったクラスメイトや先生たちには、いつもの転入生の態度だと受け取っているだろう。
だが、昨日からリアを知っている水沙や鈴にとっては、それは違うことは分かっていた。昨日会った時は、少なくとも拒絶しようとはしていなかった。いや、していないように見えた。
(私たちの勘違いだったのかな……)
「どうしたの? こんなところに突っ立って」
聴き慣れた声が聞こえ、水沙と鈴は顔を向けた。
「紅耶ちゃん」
「そうやって三人で佇んでると、すごい寂しげに見えるんだけど。なにかあった?」
水沙の呼びかけに軽く手を上げて答えてから、紅耶が近づいて来ようとすると――
「……私、先に帰ります」
リアは急に小さく呟いて歩きだした。――紅耶とは反対方向に。
「え? あっ、リアちゃん!」
「いいよ、鈴」
追いかけようとした鈴を止め、紅耶は遠ざかっていくリアの背中に向かって言った。
「リア、また後でね」
「…………」
紅耶の声には何も答えず、後ろを振り向くことなくリアはそのまま歩き去っていった。
「ご機嫌斜めみたいね」
それこそ妹を心配する姉のように、または反抗期の娘を見る母親のように紅耶はリアの後ろ姿を見ながらふっと息をついた。
「紅耶ちゃん、あの……」
「二人とも時間ある?」
リアを心配して声をかけてくる水沙に、紅耶はにっと笑って続きを言った。
「生徒会室で少しお茶しない?」




