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「リア」
「ぇ? わぅ!?」
紅耶はリアの頭をわしわしと撫でると、にっと笑った。
「まったく、しょうがないなぁリアは。せっかくおいしいご飯を食べたんだから、暗い顔しない」
「ぁ……う、は、はい」
「元気に明るくいこう、そのほうがリアは可愛いよ。あと、わたしに『はい』はなし。いい?」
「う、うん」
手を離して鼻に人差し指を向けてくる紅耶に、リアは驚きながらこくりと頷く。
「ふふ、なにか本当にお姉ちゃんみたいだね、紅耶ちゃん」
「あはは、ほんとだね」
「そりゃそうだよ、ルームメイトだもん。ね、リア」
「はい……わふっ!?」
答えたリアに、紅耶はまた手を伸ばすと頭を撫で回した。
「『うん』でしょ。なんか昨日から頭を撫でて言い聞かせてばかりだけど、今後も言い聞かせるときは撫でまくるから。髪が乱れるくらいもふもふと」
「ぅ、ぅぅ~、ご、ごめんなさい」
「よ~し。まあ、髪が乱れても、後でちゃんと直してあげるから安心して」
「……うん」
二人のやり取りに思わず水沙と鈴が噴出して笑っていると、あちこちから席を立つ音がなり、それと同時に予鈴のチャイムが食堂に響いた。
「うわっ、もう予鈴だよ! 早く行かなきゃ!」
「そうだね、リアちゃんいこう」
「う、うん。じゃあ、片づけてくるから……」
頭を抱えるように乱れた髪を両手で直すのをやめて、リアが朝食のトレイに手を伸ばすのを紅耶は手で止める。
「いいよ、わたしが片付けて置くから」
「でも」
「いいって。リアは授業前に挨拶とかしなくちゃいけないだろうから、早く行ってきな。水沙、鈴、頼むね」
「うん、紅耶ちゃん」
「まっかせといて! じゃあ、いこうリアちゃん!」
水沙がにこっと微笑み、鈴がガッツポーズをするのを見てから、紅耶はぽんっとリアの背中を優しく叩いた。
「いってらっしゃい」
「……うん、ありがとう紅耶」
お礼をいって席を立つリアに微笑んでから、紅耶も席を立つと三人に向かって元気よく言った。
「よしっ。じゃあ、三人ともしっかり勉強してくるんだぞ」
「うん、まったねー、紅耶ちゃん」
「じゃあ、またです。リアちゃんこっちだよ」
「うん……」
鈴が手をぶんぶんと振り、水沙とリアが手を繋いで初等部校舎に向かって走り出す。
それに軽く手を振って見送る紅耶を後ろ目に一度だけチラッと見たあと、リアは走りながら水沙が握っている手を見つめた。




