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「……リア」
紅耶は、胸で手を握り悲しそうに俯くリアのその横顔を見つめた。
今、リアがなにを思っているか、その本当の気持ちは分からない。魔法が使えるようになったこの世界でも、心の叫びを分かることはできない。科学が発達しようが、魔法が発達しようが、心の声は絶対に分からないだろう。
(いや、違うか)
最初から心の声の聞き方を人間は知っている。分からないと思うこと事態がおかしい。何故なら、それは人間に自然と備わっているものだから。
(とっても簡単で、とっても単純なこと)
「リーア」
「ぇ……ひゃっ!?」
紅耶は呼びかけると、膝の後ろと背中に手を回しリアを抱っこした。
(いろいろ悩む必要なんてない。心を知りたければ、触れ合えばいい)
びっくりするリアに紅耶は微笑むと、まるで母親のように言い聞かせた。
「早く顔を洗って制服に着替える。その後は、一緒にご飯を食べよう」
「ぁ、あの……」
まだ驚いているリアに、紅耶は抱っこしたまま洗面所へと歩き始めた。
「わたしとリアはこれから一緒に生活する。一緒にってどういうことか分かる?」
「えっと……」
まだ頭が働いていないのか、それともまだ驚きが残っているのか、おそらくどちらも半分半分というところだろうが、質問の意味がすぐには理解できずリアは口ごもる。
紅耶は足を止めると抱っこした手に力を込めて優しく、でも、心の奥底に入るような凛とした力強さも込めて、リアを見つめていった。
「家族ってこと」
「…………」
まるで自分のすべてを知ってくれて……知ってくれた上で全部を包まれた気がして、言葉が出なくなる。
いや……この人は実際に自分のすべてを包み支えようとしてくれているのだろう。昨日会ったばかりでお互いになにも知らないのに、それでもこの人は約束してくれているのだ。自分に誓うように、わたしはあなたと一緒にいると。
「……はい」
紅耶という人間がどういう人か分かった気がして、リアは頷いた。




