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「お言葉に甘えて無理難題言っていいよ。大丈夫、紅耶は頑丈にできてる上に神経も図太いから、ちょっとやそっとじゃなんともならない」
「褒められてる気がしないけど、まあ否定もしない」
「否定もしないんだ」
水沙が小さく呟くのを聞きながら、シリスはリアの横に立つとポンッと両肩に手を置いた。
「にしても、紅耶にお姉ちゃんはまだ早いわ。ここには、ちゃんとしたお姉ちゃんがいるんだから」
「?」
言葉の意味というよりも紅耶の挨拶から話に追いついていけず、リアは戸惑ったままシリスを見上げる。その視線に、微笑み返してからシリスはドアのほうへと顔を向けた。
「後一人紹介しておく人がいるの。もうすぐ帰ってくると思うんだけど」
――コンコン
シリスの言葉が終ると同時に、まるでタイミングを測ったかのようにノックが鳴った。
「ほらね」
リアにウインクしてみせてから、ドアが開くと同時にシリスは手を差し伸べて紹介した。
「古城学園の癒しの姉妹の妹。生徒会副会長で大学部一年、生徒会のお姉ちゃん。七夜月瑞穂よ」
「いま戻りました……え?」
急に名前を呼ばれて瑞穂がきょとんとする中、シリスはリアに話を続けた。
「学園でお嫁さんにしたい候補第二位。ちなみに、第一位は瑞穂のお姉さんだけど。頭もよくて家事全般もそつなくこなす。お菓子作りが得意で、ちょっと天然。お姉ちゃんと呼んで甘えるなら瑞穂にしときなさい。でも、瑞穂に甘えるとお菓子とかすぐ作ってくれるから、食べすぎには注意よ。太るから」
「ぁ……えと」
さらに戸惑うリアを置いてけぼりにして、シリスは今度は瑞穂に向かってきっぱり言った。
「ということなの、瑞穂」
「えっと、うん。紹介してくれてありがとう、シリスちゃん」
とりあえずシリスが自分のことをリアに話していると理解して、紹介の内容はあまり気にせず瑞穂はドアを閉めて微笑みながらお礼をいった。
「みんなの挨拶はもう終ったのかな?」
「うん、後は瑞姉だけ」
「そっか」
紅耶の答えを聞きながら瑞穂はリアに近づくと、腰を落として目線を合わせると優しく微笑んだ。
「はじめまして。シリスちゃんが紹介してくれた、七夜月瑞穂といいます。これからよろしくお願いします、リアちゃん」
「は、はい……よろしくお願いします」
きちんと頭を下げて挨拶をしてくる瑞穂に、リアも慌てて両手を前にして頭を下げた。そして、お互いに顔をあげると、また瑞穂に微笑まれてリアは少し顔を赤らめて俯いてしまった。
「さて、これでみんな挨拶したわね。他の生徒会役員や、部代表はおいおい覚えていけばいいわ」
ようやく歳相応の少女らしい仕草になってきたリアに満足して、窓から夕日の光が降り注ぐ中、金の髪を煌かせシリスは紅耶の横に立って凛といった。
「改めて、ようこそリア。魔法都市、そして、古城学園を代表してわたしたちはあなたを歓迎する」
そして、にこっと微笑んでから、もう一度手を差し出した。
「こうして挨拶を交わしたということは、わたしたちはもう友達よ。これからよろしくね、リア」
そのシリスの姿を見つめ――リアは伸ばされた手を重ねた。さっきシリスと握手した時よりも、少しだけ力を込めて手を握る。
「はい、よろしくお願いします」
そして、挨拶を返してから、少しだけ……ほんの少しだけリアは初めて微笑んだ。




