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「はじめまして、リア。高等部二年の詩凰紅耶よ。さっきシリスが言ったとおり研修生でもある。研修生のことは知ってる?」
「魔法を使えない人間と使える人間との共生へ向けて、魔法都市での共同生活をしている人間……だと聞いています」
小さい声だったもののよどみなく答えたリアに、答えを知っていた驚きよりもさっき感じていた違和感の答えが分かった気がした。
(そっか。この子は大人と話すことに慣れているんだ)
リアは質問に答えることに慣れていた。しかも、明確にはっきりとした口調で。
精神的に大人なのだろう。そう考えると、同じ歳の子と話すことが苦手だというのも頷ける。
確かに、科学者の娘らしいといえばそうかもしれないが……。
(それだけ?)
浮かんだ悪い直感に胸中で呟く。精神的に大人な子はいるし、珍しいことではない。だが、それだけならばもう少し表情が豊かであってもいいはずだった。
例えば、父親と同じように魔法使いに嫌悪感を持っていたとしても。
「まあそういうものかな。そんなに大層なものでもないんだけどね」
しかし、心に浮かんだ疑問はとりあえず無視して紅耶は明るい声で話を進めた。
リアに何かあったとしても、これからルームメイトとして色々話して一緒に生活していけば、それで不安は取り除いていけるだろうし、紅耶もそうしようと心の決めている。
――ただ、そうしようと決めた心のどこかで、こういった悪い直感は当たるものだと陰鬱に認めてもいた。
「研修生っていっても特別なことはないし、寮の部屋だってみんなと同じものよ。特別にしたら共同生活の意味がないっていっても、もう少しなにかあってもよさそうなものなのに。そう思わない? 一応、国から派遣されてるわけだしさ」
「えっと……」
紅耶から聞かれて、リアはどう答えたらいいかわからず初めて少女らしい困った表情を見せた。
その表情に満足して、紅耶はリアの髪をくしゃくしゃと撫でながら、にっと笑った。
「だから、これからルームメイトとして一緒に生活するけど、研修生だからってあまり期待しないでね。その代わりでもないけど、お互い遠慮はなしでいこう。一緒に生活するのなら家族みたいなものだし、わたしのことはお姉ちゃんみたいに思って何でもいって」
「ぁ……ぅ、はい」
頭をくしゃくしゃに撫でられて、さらに戸惑いながらもリアは頷いた。その返事を聞いて、紅耶も撫でる手を離す。
「よかったわね、リア。何でも言っていいんだって」
紅耶の挨拶が終ったところで、シリスが笑いながら口を開いた。




