―― 詩鳳紅耶 一年前 ―― 1
魔法犯罪について。
魔法使いによる犯罪に対する鉄則はただ一つだ。特別魔法対策課の研修において一番最初に教えられることでもある。
魔法使いには手加減するな。相手は、意識一つで人間を殺傷しうる力を持っている。
人と思うな、化物と思え。
(同じ人間なのにね)
馬鹿かと思う。『化物』と思い込ませ、『こちらを下にして』どうするのだ。
『同じ人間だからこそ』勝てるのに。
ビルが立ち並ぶ中にぽっかりと空いた一つの隙間。別にどうということはないビルの建設予定地となっている空き地で、少女はブロック塀に寄りかかり空を見上げた。ビルが多く、陽が差し込まない薄暗い空き地から空を見上げると不思議とその印象まで変わって見える。湿った空気、湿った地面、晴れているのに湿っていると感じる空。あまり好きではないし、長居はしたくない。
そもそも好き好んでここにいるわけでもない。だったらすぐに離れればいいのだが、離れられない理由がある。当然だ、理由がなければ――やる事がなければ、居たくない場所に居続ける意味はない。
何にしてもそうだろう、とそんなことを思う。人生なんて大きなことは言いたくはないが、好き好んでもいないのに選ばされ、又は、選ぶしかなくその場所に居続けるなんていうことは良くあることだった。
ただ、『選ぶしかなく』から『選んだ』と考えることができれば、それでまた何かが変わっていくはずだとも思っていた。例え、周りがそうは思わなくとも、自分の中で整理し、納得することができればきっと何かを変えることができる。
(自分への言い訳でもいいじゃない。それで前に進めれば)
誰もが望んだ道を進めるわけじゃない。だったら、今居る道で自分のできる一番のことをするしかない。
望んだ結果を得る為にも。
『独自に動くよ』
『え? またですか』
『安心安全の通常運転でしょ。あと、よろしくね』
そう伝えてから一時間。メンバーから苦笑される中、少女は単独で動き出した。相手の動きは情報で大体把握している。後は、相手の思考を読みとりどう先回りするか――とはいっても理屈ではなくほとんど感で考えているのだが、少女は自分の感を誰よりも信じていた。そして、現実に外れたことはない。
そうして辿り着いたビルの隙間の空き地。感覚ではもうそろそろのはずだった。二つある無線の一つを取り出しイヤホンを耳に付けると、思っていた通り丁度ザザッと音が鳴る。




